侍ジャパン・栗山監督が持つ“不思議な力”とは 2度野球から逃げた過去が(小林信也)

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 第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に向け、「最強の侍ジャパンが実現した」と期待が高まっている。

 大谷翔平、ダルビッシュ有、鈴木誠也に加え、今季からMLBに挑む吉田正尚も1次ラウンドからの参加を表明。さらに“母親が日本人”の外野手ラーズ・ヌートバー(カージナルス)も決まった。

 豪華メンバー実現の背景を取材すると、多くの関係者が、「栗山英樹監督のおかげ」と口をそろえる。

「栗山さんはアメリカに出かけ、直接選手と交渉しました。今までの代表監督はしなかった。監督から直に誘われたらメジャーリーガーだって心が動きます。それができるのが、栗山さんの強みです」

 日本ハム監督時代から近くで栗山を見る関係者が続ける。

「現役時代の栗山は今回代表入りするどの選手より実績がない、下だとわかっている。だからこそ、下から目線でも話ができる。超一流監督にはできません」

 大谷、ダルビッシュ、鈴木らと早々に会い、参加を要請した栗山はじめスタッフの決断と行動力の成果。

 正直なところ、栗山が侍ジャパン監督に決まった時、私は首をかしげた。

「トップに位置する日本代表の監督が栗山か?」

 栗山は、気配りの人、調和を図る人、バランスの取れる人……。それが野球を極める監督像とは思えなかった。

「求められる監督像が変わっていますからね」

 ある野球関係者が言った。

「データは専門のアナリストが分析します。選手の起用は契約で制約されていますし、分業制が確立して監督のひらめきに依存する割合は減っています。パワハラが糾弾され、高圧的なワンマン監督も非難されます」

 つまり、調整型の栗山タイプが“望ましい監督”として浮かび上がる。それが時代の流れだというのだ。

 過去のWBC監督やプロから選ばれた五輪監督を見ても長嶋茂雄、王貞治、星野仙一、原辰徳、山本浩二ら、監督としての評価はさておき、栗山が到底敵わない才能と実績の持ち主ばかりだ。

 稲葉篤紀はその範疇から外れる。だが、稲葉は2019プレミア12と東京五輪の2大会で日本を優勝に導いている。この辺にも伏線を感じるべきなのだろう。

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