中村紀洋、吉井理人、今岡誠…春季キャンプの「テスト生」から見事に這い上がった名選手

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中村獲りを3回断った落合監督

 今年のプロ野球「春季キャンプ」も中盤に入り、選手たちはシーズン開幕に照準を合わせ、調整に余念がない。その一方で、過去には現役続行を熱望し、テスト生としてキャンプに臨んだ男たちもいた。2006年オフ、オリックスとの契約交渉がまとまらず、年明け後の07年1月17日に自由契約になった中村紀洋もその一人である。【久保田龍雄/ライター】

 他球団でのプレーを望んだ中村だったが、岩村明憲のメジャー移籍で三塁が空いたヤクルトが獲得しない意向を表明するなど、どこからも声がかからなかった。それでも、シーズン開幕までに朗報が届くことを信じて、孤独の自主トレを続けていた。

 そんなさなかの2月12日、中日がテスト生としてキャンプ参加を呼びかけてきた。

 当時の中日は森野将彦が三塁を守り、ポジションが重なる中村獲りには消極的だった。落合博満監督も「(育成年俸最低額の)400万円でも獲らない」と明言しており、自身のYouTubeチャンネルでも、中村の近鉄時代の恩師・梨田昌孝氏が頭を下げてきたのを3回断ったという当時の秘話を明らかにしている。

“決意の丸刈り”でキャンプに参加

 だが、キャンプ開始後、梨田氏から4回目の依頼を受けると、西川順之助球団社長と相談し、育成契約という条件で入団テストを行うことを決めた。

「『本人がやりたいんだろ?』『どこもないんだろ? 』で、テストを受けたい。何が何でも野球をやりたい。そこまで切羽詰まっているなら、どこか門を開いてやらなきゃいけない」(落合監督)

 これに対して、中村も「感謝の気持ちしかない。ユニホームが着られるなら、今までやって来たことをアピールして、何とか合格したい」と“決意の丸刈り”でキャンプに参加。2月15日のテスト初日で136スイング中38発の柵越えを放つなど、現役続行にかける必死の思いを体現し、同25日、年俸400万円の育成契約で合格を勝ち取った。

「初心に帰って野球を追求したい。獲って良かったと思われるように頑張っていきたい」と誓った中村は、3月22日に支配下登録されると、打率.293、20本塁打、79打点でチームのリーグ優勝に貢献し、日本シリーズでも18打数8安打4打点の活躍で、MVPを手にした。

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