ロシア軍の“信じがたいミス”がまた発覚…最新兵器「Tor-M2DT」がウクライナ軍に破壊されたウラ事情

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 Forbes JAPAN(電子版)は2月7日、「ロシア、北極圏用防空車両をウクライナに派遣するも吹き飛ばされる」との記事を配信した。ジャーナリストのデイヴィッド・アックス(David Axe)氏の署名原稿を日本語に翻訳したものだ。

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 Forbesが伝えた「北極圏用防空車両」とは、「Tor-M2DT」という短距離・地対空ミサイルシステムのこと。記事によると製造されたのは12台だといい、ロシア軍にとっては虎の子の最新兵器だ。

「Tor」は地対空ミサイルシステムの総称になる。ミサイルとレーダーを1台の車両に搭載したことが特徴とされ、敵の戦闘機、攻撃機、ヘリコプター、ドローンなどを撃墜するための兵器だ。軍事ジャーナリストが言う。

「『Tor』シリーズのうち『M2DT』は北極専用で、マイナス50度まで耐えられる設計になっています。2台でワンセットですが、これは雪道で1台がスタックしても、もう1台が押したり引いたりして脱出できるようにするためです。1台につき地対空ミサイルを8発、2台で16発を搭載し、その射程は約16キロと推定されています」

 Tor-M2DTが開発されたのは、ロシアにとって「北極海航路」が国益に直結しているからだという。近年、地球温暖化の影響で、夏季であれば北極海の一部を船が航行できるようになった。

「北極海航路を使えば、ロシアは北方で産出される液化石油ガス(LNG)などを、ヨーロッパ側にもアジア側にも海路で輸送することが可能になります。その北極海航路の防空を担うために、Tor-M2DTが開発・配備されました。ちなみにアメリカは、『航路の自由を保障するため、むしろミサイルシステムは不要』と配備に反対を表明しています」(同・軍事ジャーナリスト)

国営テレビ局が詳報

 ロシア軍は昨年末、Tor-M2DTをウクライナ戦争の最前線に投入した。だが、“軍事の常識”に照らし合わせると、専門家でも首をひねるようなことが多々あったという。

「そもそもTor-M2DTが必要なのかという根本的な疑問があります。ウクライナ軍は航空戦力の不足に苦しみ、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領(45)は今月、NATO(北大西洋条約機構)加盟国を歴訪し、戦闘機の支援を強く要請しました。ロシア軍が地対空ミサイルを使う場面など、そうは考えられません」(同・軍事ジャーナリスト)

 おまけにロシア軍は「Tor-M2DTがウクライナに向かう」と大宣伝したのだ。国防省が運営する国営テレビネットワーク「ズベズダ(Zvezda)」が詳報した。

「陸上部隊や軍艦、軍用機の移動は、極秘中の極秘が軍の基本です。ところがロシア国防省は、Tor-M2DTの出撃を大々的に報道しました。太平洋戦争で言えば、日本海軍が新聞社に『明日、わが連合艦隊は奇襲攻撃のため、真珠湾に向かって出航します』と発表するようなものでしょう。Tor-M2DTが出撃するからといって、ロシア国民の戦意が高揚したり、最前線の兵士の士気が上がったりすることもありません。要するに全く理解できない発表だったのです」(同・軍事ジャーナリスト)

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