選抜高校野球「21世紀枠」はもう時代遅れ? 関係者は「推薦校探し」に四苦八苦

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「一般選考枠」に比べて力が劣ることは明らか

 36校の代表校が発表された第95回選抜高校野球。今年の「一般選考枠」は波乱がなく、各地区も比較的順当な選出だった一方で、毎年、野球ファンのなかで議論となるのが「21世紀枠」の選考である。「21世紀枠」は、文字通り21世紀となった2001年の第73回大会から導入されたもの。改めて「21世紀枠」の選考基準を振り返ってみよう。【西尾典文/野球ライター】

・勝敗にこだわらず多角的に出場校を選ぶセンバツ大会の特性を生かし、技能だけではなく高校野球の模範的な姿を実践している学校を以下の基準に沿って選ぶ。

1、秋季都道府県大会のベスト16以上(加盟校が129校以上の都道府県はベスト32以上)が対象。
2、以下の推薦例のいずれかに当てはまる学校。
・少数部員、施設面のハンディ、自然災害など困難な環境の克服
・学業と部活動の両立
・近年の試合成績が良好ながら、強豪校に惜敗するなどして甲子園出場機会に恵まれていない
・創意工夫した練習で成果を上げている
・校内、地域での活動が他の生徒や他校、地域に好影響を与えている。

 秋季都道府県大会で一定以上の成績を条件に入れているものの、秋の地区大会で上位に進出して勝ち抜いて「一般選考枠」で選ばれたチームに比べると力が劣ることは明らかだ。過去、「21世紀枠」で出場した58校のうち、初戦を突破したのは14校。そのうち、21世紀枠同士での対戦を除けば、11校にとどまっている。

“ある程度の伝統”と“それなりの偏差値”

 過去には、2001年の宜野座(沖縄)、09年の利府(宮城)が準決勝に進出する“快進撃”を見せたが、過去10年間を振り返ると、「一般選考枠」で選ばれたチームに勝った「21世紀枠」のチームは、15年の松山東(愛媛)しかいない(※新型コロナウイルス感染拡大の影響で、春夏の甲子園が中止になった20年。その代替として、選抜出場予定校が参加した『甲子園交流試合』では、帯広農(北海道)が健大高崎(群馬)に勝利した。帯広農は『21世紀枠』、健大高崎は『一般選考枠』でそれぞれ選抜に出場予定だった)

 元々力の差があるのは当然だとはいえ、ここ数年で問題視されているのが、推薦できる高校が年々少なくなっているという点だ。

 前述した「21世紀枠」の選考基準にある秋季都道府県大会についても、2012年までは都道府県大会でベスト8以上(加盟校が129校以上の都道府県はベスト16以上)だったものを、13年から現在の形に条件を緩和している。それでも、高校野球の関係者からは“推薦校探し”に苦労しているという話が聞こえてくる。

 今年「21世紀枠」で選出された石橋(栃木)は、最終候補に残るのは3回目だった。また、春夏合わせて42回の出場、7回の優勝を誇る松山商(愛媛)が昨年から2年続けて愛媛県の推薦校となっていた。「21世紀枠」の“推薦校探し”が難航していることを象徴したものだ。

「どの学校の指導者も、自分のチームが『21世紀枠』の推薦校になれるかどうかというのはよく分かっていると思います。“ある程度の伝統”があって、“それなりの偏差値”がないと、『21世紀枠』の最終候補に残ることはまずありません。だから『チャンスがあるな』と感じている学校が、清掃活動といった地域貢献や、工夫した練習、最近では、子供に対する野球の普及活動をより熱心に行うようになっていると思います。これらの活動自体は、もちろん良いことですが、“順番”が逆に見えますよね。とはいえ、『21世紀枠での出場を目指しています』と声高らかには言えない雰囲気もあります。『21世紀枠』に選ばれると、学校や地域の方が喜んでくれますが、現場としては、何とも言いづらい制度ではないでしょうか」(ある高校の指導者)

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