アダニ・ショックがインドに与える影響 モディ首相と大富豪の怪しい関係が白日の下に晒されるか

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大荒れのインド市場

 アダニ・グループの株式時価総額はあっという間に半減した。消失額は8兆ルピー(12兆4000億円)を超え、インド史上最大級の規模に達している。予定していた2000億ルピー(3100億円)規模の公募増資を撤回せざるを得なくなっている。

 アダニの昨年度の負債額は2兆ルピー(3兆1000億円)に上っているが、疑惑発覚後、海外の金融機関はアダニとの取り引きに極めて慎重になっている。アダニ疑惑により国営銀行の株価が急落しており、「インドの金融システム全体に深刻な影響が出るのでないか」と懸念が広がっている。

 インドの株式市場は大荒れになっており、皮肉にもアダニが主張したとおり、インド経済そのものに対する信頼問題へと発展している。

 インド経済を大混乱に陥れた張本人は一代で世界屈指の富豪に昇りつめたゴーダム・アダニ氏だ。アダニ氏の個人資産は昨年一時世界第2位(1470億ドル)となったが、1月24日以後に急落し、13位と大きく後退している。

 アダニ氏にとってさらに悩ましいのは政治との関係が取りざたされていることだ。

「アダニが急成長した背景にはモディ首相との密接な関係があった」との指摘がかねてなされていた。両氏は同じ西部グジャラート州の出身で、アダニは同州を基盤に事業を拡大してきたからだ。

 2月1日のインド議会では野党議員が政府の成長計画へのアダニの関与を激しく追及したことから、審議が中断を余儀なくされた。インド政治を大きく動揺させるスキャンダルに発展するリスクが生じており、モディ政権にとって大きな足かせとなりつつあるが、「その悪影響を最も受けるのは雇用対策だ」と筆者は考えている。

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