人口減少でディストピア化する日本 豊かに暮らすための「四つの方策」とは

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マイナスのループ

 人口減少が日本経済に及ぼす影響は、これにとどまらない。深刻さで優るのは、将来に対する希望や活力を人々から奪っていったことだ。この20年間、社会保障費の急増や空き家問題に代表されるように高齢社会に伴う諸課題が顕在化した。あらゆる分野で若手人材の不足が叫ばれ、地方では自治体の“消滅”までが語られるようになった。高齢社会の厳しい現実が多くの人に知られるようになるにつれて、出生数は目に見えて少なくなっていったのである。いまや若い世代にとって「未来」という言葉がネガティブなワードとなっている。

 これは若い世代に限ったことではない。医療や介護サービスの度重なる改悪で、中高年にも老後生活への不安は広がっている。「人生100年」と言われるほど寿命が延びたことで、“気ままな老後暮らし”が幻想であったことに多くの人が気付いた。

 こうなると、期待成長率は低下する。1990年代半ば以降の日本では、将来への期待が急速にしぼみ、投資不足が起きていたのだ。投資不足は潜在成長力を弱め、生産性を低下させていく。こうして日本経済はどんどんマイナスのループに陥っていったのである。投資をしないので企業には内部留保だけが積み上がり、労働者の賃金はほとんど上昇することはなかった。

新興国のマーケットは魅力的だったが…

 タイミングも悪かった。日本で少子高齢化や人口減少が進むのと並行してコンピューターが急速に発達・普及し、人件費の安い新興国に次々と最新鋭の工場が建設されていったのである。新興国は高い技術力やスキルがなくとも、“それなりの品質”の製品を大量生産できるようになったのだ。各国経済が急速に発展し、人々の生活水準が格段に向上したことで、“それなりの品質”の製品が流通するマーケットも次々と誕生した。

 これは、日本企業にとって新たなライバルの出現であった。圧倒的な技術力による優位性を失ったのである。新興国で作られた製品はデフレ経済に陥っていた日本に大量に輸入され、内需で成り立ってきた企業までを苦境に追い込んだ。

 一方で、日本企業にとって新興国に新たに誕生したマーケットは、国内マーケットの縮小を補う魅力的なフロンティアであった。反転攻勢とばかりに乗り込んだのである。しかしながら、“それなりの品質”が中心の新興マーケットにとって日本製品はオーバースペックであった。欧米マーケットでのようには売れず、日本企業は戦略の立て直しを迫られた。

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