人口減少でディストピア化する日本 豊かに暮らすための「四つの方策」とは

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 かつて1位だった日本の競争力は、現在、世界34位なのだという。隔世の感があるが、もはや人口増は望めず、何か手を打たなければ今後も下がる一方だろう。では、どんな方策があるというのか。それは唯一、人口減を前提とした社会に日本を作り変えることである。【河合雅司/ジャーナリスト】(前後編の後編/前編を読む

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 日本経済の衰退が覆い難くなってきた。

 GDP(国内総生産)こそ何とか世界第3位を維持しているものの、4位のドイツにかなり迫られている。それどころか、2030年ごろにはインドに追い抜かれると見られているのだ。

 各種の国際ランキングを見ると、下位に甘んじているものが少なくない。国際経営開発研究所(IMD)の「世界競争力ランキング」では、22年の日本の総合順位は34位だ。1990年代初頭には首位をキープしていただけに、「別の国」になってしまったような印象である。

 経済が成長しなければ、国民の豊かさが損なわれていく。日本経済研究センターは、個人の豊かさを示す指標とされる1人当たり名目GDPが22年に台湾、23年には韓国を下回ると試算している。イギリスの経済誌「エコノミスト」が、世界中のマクドナルドで売られているビッグマックの価格で各国の購買力を比較した「ビッグマック指数」を毎年2回発表しているが、22年7月の日本は54カ国中41位だ。中国や韓国、タイよりも安く、日本人の賃金の低さを映し出している。

 もちろん、急速に進んだ円安でドル換算の金額が目減りしているという一時的要因もある。だが、円安だけでここまでは落ち込まない。デジタル化の遅れが象徴するように、あらゆる分野で劣化が進んでいるのだ。日本製品が次々と世界を席巻し、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などと言われていた頃の勢いはどこにも見当たらない。

生産年齢人口が約14%減少

 この四半世紀、日本にいったい何が起きていたというのか。日本経済の低迷についてはさまざまな分析が加えられてきたが、言うまでもなくデフレが最大の要因だ。バブル経済の崩壊や金融危機によって日本企業の競争力は低下した。だが、デフレを招いた初発の原因ばかりを追究していても、かくも長く脱却できない理由は解明できない。

 そこで国勢調査を見てみると、経済の主たる担い手の生産年齢人口(15~64歳)がピークを迎えたのは、日本経済が低迷を始めた1995年(8716万4721人)だ。2020年は7508万7865人なのでこの四半世紀に13.9%も少なくなっている。生産年齢人口の減少と歩調を合わせる形で日本経済が低迷したのは偶然ではないだろう。少子高齢化を伴いながら進む人口減少はデフレを長期化させている大きな要因であることは間違いない。

 生産年齢人口といえば、「働き手」と同時に「旺盛な消費者」でもある。両方が一度に減ったのだから日本経済が低成長を続けてきたのも無理はない。

 デフレを長引かせている人口の変化はもう一つある。この間、高齢者が激増したことだ。高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)が14%を超えて日本が本格的な高齢社会に突入したのは1994年である。その後も年を追うごとに上昇を続け、2022年は29.1%だ。主たる収入が年金という高齢消費者がマーケットの「主役」を占めるようになったのでは、企業や商店は値上げしたくても簡単にはできない。

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