「罠の戦争」 草なぎ剛の般若のような形相をみて思い出した昭和の名優 登場人物の苗字に秘密

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主要登場人物の名字に「秘密」がある

 復讐を開始した鷲津は、まず私設秘書・蛍原梨恵(小野花梨[24])にパワハラを繰り返していた公設政策秘書の虻川勝次(田口浩正[55])に罠を仕掛ける。政策秘書は秘書の中で一番給与が高いため、最古参の秘書が務めるケースが多い。

 鷲津は虻川のパワハラ現場を「週刊新時代」の熊谷由貴記者(宮澤エマ[34])に撮影させた。そのうえ、ハラスメント根絶派の鴨井ゆう子厚労相(片平なぎさ[63])にパワハラ現場を目撃させ、騒ぎを大きくした。腹を括った鷲津はなかなか狡猾だ。

 さらに、この問題の責任を問われた犬飼が謝罪会見に臨むことになると、スピーチ原稿を差し替えてしまう。やはり罠である。

 犬飼は虻川のパワハラを潔く認め、謝罪し、改善策を発表するはずだったが、鷲津が差し替えた原稿には「ハラスメントについては事実無根。被害者気取りの女が勝手にわめき散らし……」と書かれていた。開き直りだ。無能な犬飼はそのまま読み上げた。

 犬飼はその前に「女の仕事は子供を産むこと」との暴言を吐いていたこともあって、記者たちから吊し上げを食う。問題の発端をつくった虻川も青ざめた。もっとも、犬飼も虻川も本当は反省なんてしていないのだから、叩かれるくらいで、ちょうど良かった。

 先々の興味は鷲津の死闘がどこまで続くかである。犬飼、虻川は政界内では小物に属するので、倒せるはず。鷲津の戦いは私憤を晴らすだけでは終わらず、政界を牛耳る与党・民政党幹事長の鶴巻憲一(岸部一徳[76])や竜崎始首相(高橋克典[58])たちも相手にすることになるのではないか。物語が進むテンポが速いので、「鷲津対首相」を描くことも可能であるはずだ。

 犬飼に限らず、主要登場人物の名字には全て動物の名が含まれている。鷲津、虻川、蛍原、熊谷、鴨井、鶴巻、竜崎。ほかに2世議員の鷹野聡史(小澤征悦[48])や犬飼事務所の見習い秘書・蛯沢眞人(杉野遥亮[27])たちもいる。

 名字の動物は本人のキャラクターを暗示しているのか? それを確かめながら観るのも一興だろう。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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