村上宗隆も佐々木朗希も“吸血鬼”の「標的」 藤浪テコに大谷陥落なら「独り占め」加速

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吉田の巨額契約に続く剛腕発揮

 プロ野球阪神からポスティングシステムによるMLB移籍を目指していた藤浪晋太郎投手(28)がアスレチックスと年俸325万ドル(約4億2000万円)の単年契約で合意に至った。昨季年俸は4900万円で、10倍近くに跳ね上がったことになる。昨季も3勝5敗に終わるなど近年低迷が続く右腕だが、“吸血鬼”の異名を取る代理人スコット・ボラス氏の仲介で期限寸前に交渉は成立をみた。ボラス氏は日米で衝撃を与えた、吉田正尚外野手のレッドソックス移籍の際に引き出した巨額契約に続き、持ち前の剛腕を遺憾なく発揮した形だ。その評価は高まるばかりで、ライバル関係にある米大手マネジメント会社の代理人は「今後、日本の有力選手がボラスに持っていかれないか、注視していく必要がある」と警戒感を隠さない。【球人ニキ(たまんちゅにき)/野球ライター】

 藤浪は大阪桐蔭高校時代にエースとして甲子園大会で春夏連覇を果たした。岩手・花巻東高校の大谷翔平(エンゼルス)と双璧の逸材とされ、ドラフト1位で入団した阪神では1年目から3年連続で2桁勝利を挙げた。

 しかし、金本知憲監督が就任した4年目から制球難で不振に陥る。コントロールがままならず、四死球を連発するノーコン病は“イップス”さえ囁かれるほど深刻だった。昨季終盤に改善の兆しを見せたものの、阪神では完全復活とはならなかった。このオフはポスティングにかけても、MLBから獲得球団が現れるかどうか不透明な状況だった。

 前出の代理人が嘆息気味にこう語る。

「確かに藤浪の160キロを超える直球、長身から角度のある球筋、昨季終盤に駆使したスプリットはメジャーでも強みになる。マウンド、公式球を含めた環境が激変することで、阪神時代から生まれ変わる期待感がないことはない。ただ、藤浪を調査してきたメジャー球団は昨季の復調にも半信半疑だった。この額で移籍をまとめ上げたのはボラスの力と認めざるを得ないところはある」

 昨年末には、オリックスから同様にポスティング移籍を目指した吉田がMLB球団との交渉解禁直後、日本人野手過去最高となる5年総額9000万ドル(約115億円)の巨額契約を結んだ。

「吉田は打撃しかセールスポイントがなく、長距離打者でもない。本人も冷静に自身を分析し、3年1000万ドル(約13億円)程度と控えめな希望だったが、それをはるかに超える条件が出てきた。コロナ禍から売り上げを回復したメジャー全体のカネ余り、米国のインフレなどが背景にあったとしても、これほどの好条件を持ってきたボラスの手腕のインパクトは極めて大きい」(同代理人)

「みんな、ボラスになびきかねない」

 ボラス氏なら藤浪でも信じられないような契約を勝ち取るのではないか。関係者は固唾を飲んで見守っていた。

 アスレチックスは映画「マネーボール」のモデルとしても有名なビリー・ビーン氏が長く編成トップを務めた。他球団とは一線を画した独特の選手評価法により、藤浪が大化けする可能性に懸けたとみられる。一方で藤浪の年俸はアスレチックスで5番目の高額になるという。費用対効果にシビアなアスレチックスが阪神への譲渡金65万ドル(約8800万円)を支払ってまでも藤浪を獲得しただけに、ボラス氏に対する日本人メジャー予備軍のニーズは一段と高まるに違いない。

 NPBでは今オフ、日本球界ナンバーワンの山本由伸投手(オリックス)がポスティングで米移籍する可能性が高い。「令和初の三冠王」村上宗隆内野手(ヤクルト)は早ければ2026年からのメジャー挑戦を視野に入れる。「令和の怪物」・佐々木朗希投手(ロッテ)もいずれその時が来るだろう。前出の代理人は、「一時、メジャー移籍を諦めかけた吉田は昨年9月に代理人をボラスに代えたことで、一気に話が進んだ。これだけの交渉能力の高さを見せつけられると……。これからアメリカを目指す選手はみんな、ボラスになびきかねない」と“ボラス1強”へと加速しかねない現状に危機感を募らせる。

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