「中井貴一」特別インタビュー 素晴らしい後輩たちとのセッション

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「若かった頃より4倍、5倍は努力しなければ」

 昔、あるプロデューサーの方に「貴一ちゃんな、あんたは主役をやる人間や。でも、ある時が来たらどこかで若い奴らを支えるっていうのを忘れんといてな」と言われたことがあります。「若い奴らを支えてやってくれ。あんたの力が必要や」と言われたことが、今でもすごく耳に残っています。

 ただ、若い人を支えるには、そのための努力を自分に課さなければならないと思うんです。物を作り上げていく職業は年を取るほどシビアになっていくというか、努力をしなきゃいけない。同じ舞台に立っている俳優には、20代や30代、もっともっと若い10代の、素晴らしい才能を持った人がたくさんいるんです。そこで僕たちは勝負をしていかなければならない。自分が若かった頃より4倍、5倍は努力しなければかなわないと思っています。自分は大物だなんて勘違いをしていたら……そんな勘違いは誰もしないと思いますが(笑)、先輩として後輩を支えることなんてできません。

 常に今を意識しながら自分がどれだけ努力できるかが大事だと思っているんですね。努力ができなくなった時に引退するべきだと僕は思います。

端役の吉田羊を見て驚愕

〈後輩を支えたいという中井は常に「学ぶ」ことを忘れない。例えば、今やドラマ、映画に引っ張りダコの売れっ子女優となった吉田羊。彼女の才能を見出した一人が中井であることは知る人ぞ知る話だ。しかし、中井は彼女に「チャンスを与えた」とは全く考えていないと言う。それどころか、仕事に対する彼女の姿勢から「学んだ」と言うのだ。〉

 北海道の富良野で撮影をしたドラマ「風のガーデン」では、撮影現場に着替える場所がないので、ホテルの部屋で衣装に着替えてからロケ場所に出発する、ということを繰り返していました。朝方テレビをつけていたらちょうどNHKの連続テレビ小説「瞳」をやっていたんです。ちゃんと見ていたわけではなく、着替えている最中だったと思います。患者役の西田(敏行)さんが入院するシーンで、あ、西田さんだ、と思って。そこへお医者さんと看護師さんが「入院の手続きしますね」と入って来る。その後ろ姿の看護師さんが吉田さんだったと思うんですよ。そのフレームインの仕方や「看護師の○○です」という言い方、後ろ姿がすごく自然だったのを覚えています。ほんの一瞬のシーンだったので、エキストラさんなのか分からなかったんですが、こんなに自然とシーンに入れる方がいるんだ、と驚きました。

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