FA補強ゼロの巨人に“金の卵”が…育成選手に「スピードスター」と「即戦力右腕」

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侍ジャパンとの強化試合でマウンドに

 投手で面白い存在になりそうなのが、明豊高出身で高校卒2年目の右腕、京本眞だ。一昨年の育成ドラフト7位での入団で、ルーキーイヤーの昨年は二軍で1試合の登板に終わったが、フェニックスリーグでの好投が認められて、昨年11月に行われた侍ジャパンとの強化試合で、マウンドに上がっている。村上宗隆(ヤクルト)にホームランは浴びたものの、長身から投げ込むストレートは角度があり、将来性の高さは、チームの若手投手陣の中でも上位だ。

 野手で面白いのが、北海学園大出身の2年目、鈴木大和。昨年は、二軍でわずか5安打に終わったが、三軍戦では度々光るプレーを見せている。鈴木には、一軍でも勝負できる“圧倒的な武器”がある。

「水野雄二スカウト部長も“足の一芸”で指名を決めたと話しています。そのスピードは、チームの中でも間違いなくトップです。三軍戦では1試合で4盗塁を決めた試合もありました。ここ数年、代走の切り札となっていた増田大輝が過去2年間は、盗塁数を落としており、それに代わる存在としては一番手ではないでしょうか。今年から、かつて『足のスペシャリスト』として活躍した鈴木尚広コーチが就任したことも追い風になりそうです」(前出のスポーツ紙記者)

密かな“即戦力候補”

 鈴木尚広コーチは現役時代、原監督の下で才能が開花し、終盤に1点が欲しい時の切り札となっていた選手である。自分と同じタイプの鈴木大和を引き上げようとすることは十分に考えられるだろう。

 最後に、ルーキーからも1人注目株を取り上げたい。それが育成ドラフト1位で指名された、投手の松井颯(明星大)である。花咲徳栄では4番手で、大学時代は首都リーグの二部でプレーしていたため、意外に低い順位での指名となったが、最速150キロを超えるスピードと、コーナーにしっかり投げ分けられるコントロールは高いレベルにある。

 筆者が、ドラフト後に巨人のスカウトから話を聞いた際には「育成まで残っていたのは本当にラッキーでした。(昨年4月29日に支配下登録された)菊地大稀(桐蔭横浜大、2021年育成ドラフト6位)の大学時代と比べても、全てが上です」というコメントが聞かれており、密かな“即戦力候補”とも言える存在である。菊地大稀のように早くから一軍デビューする可能性もありそうだ。

 原監督の第二次政権時代(06年~15年)には、山口鉄也や松本哲也が育成ドラフトから主力となり、チームに欠かせない存在となっていた。その再来を望むファンの声は多い。ここで挙げた選手たちが新たな“育成の巨人”を担うことができるのか。キャンプでは「3桁の背番号」を背負う選手たちに、ぜひ注目してほしい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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