日本代表が抱える「2023年問題」とは 森保監督にはデュッセルドルフに移住を勧める理由

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監督も“欧州”で生活すべき

 チームとしての強化がままならないのは、他のアジア列強国も似たようなものだろう。となると、今後は海外の強豪クラブでのリーグ戦やカップ戦で“個の能力”を高めるしかサムライブルーの強化方法はない。

 これらの問題点を一気に解消する唯一の方法は、かつてオーストラリアがOFC(オセアニアサッカー連盟)からAFC(アジアサッカー連盟)に転籍したように、日本がAFCからUEFA(欧州サッカー連盟)に転籍することだ。

 そうすれば日常的にEUROやネーションズリーグの予選で強豪国と対戦できるし、W杯予選も厳しい試合の連続となるだろう。

 ただし、事はそう簡単に運ばない。やはり地道に個の能力を上げていくしかないようだ。

 そして最後に提言として、森保監督にはJFAの拠点があるドイツのデュッセルドルフへの移住を勧めたい。

 近年のW杯はチーム強化の時間が限られるため、守備を固めてカウンターを狙うチームが多い。一方、欧州の5大リーグ(イングランド、スペイン、ドイツ、フランス、イタリア)で優勝を争うチームは、最先端の戦術や戦略などを日々アップデートしている。

“海外組”監督のメリット

 そうした変化を、各国リーグやCL(チャンピオンズリーグ)、EL(ヨーロッパリーグ)の視察や、ビッグクラブの練習方法を通じて知ることで、指導者としてのスキルアップを図るべきである。Jリーグの視察は国内にとどまるコーチに任せればいい。

 そして、海外生活で気づいたことを日本のサッカー界にフィードバックして欲しい。

 日本代表の歴代の外国人監督は、様々な提言をしてきた。「トライアングル」(ハンス・オフト監督)、「フラット3」(フィリップ・トルシエ監督)、「考えて走る。ポリバレント」(イヴィチャ・オシム監督)、「インテンシティ」(アルベルト・ザッケローニ監督)、「デュエル」(ヴァイッド・ハリルホジッチ監督)などだ。

 これらは日本代表にとどまらず、Jリーグをはじめ大学、高校サッカーなど育成年代の指導者にも浸透し、いまや常識になっている。

 森保監督にはヨーロッパに滞在して“最先端のサッカー”を日々体験し、そこで得た「気づき」を日本代表はもちろん日本のサッカー界にもフィードバックして欲しい。

 反町技術委員長は「長いスパンで(海外組の)選手を生で見ることも必要になる。練習を見て勉強しても私はいいと思っている。ヨーロッパでアップデートして、世界目線で見て欲しい」と私案を語った。

 日本代表の選手は“海外組”が当たり前になった。監督もヨーロッパのクラブチームを指導する“海外組”になることは難しいかもしれないが、現地で生活することで最先端のサッカーを肌感覚で知ることができるのではないだろうか。そうした先駆者になることを森保監督には期待したい。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

デイリー新潮編集部

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