藤井聡太の師匠が語る、羽生善治九段との「王将戦」見どころ 意外な勝敗予想は?

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

 メッシ(35)対エムバペ(24)――これまでサッカー界を引っ張ってきたスターと、これからのサッカー界を背負っていく新鋭との戦い。サッカーW杯決勝はそんな側面もあった。ところ変わってわが国でも、同じような戦いが盤上で始まろうとしている。

 ***

 2023年の大一番、藤井聡太五冠(20)に羽生善治九段(52)が挑む第72期王将戦七番勝負――それぞれの説明は不要だろう。一時代を築いた羽生、そして築くであろう藤井。二人がタイトル戦で相まみえるのは、意外にも今回が初めてだ。

 対局そのものは過去にも行われている。通算成績は藤井が7勝1敗と大きく勝ち越し。直近では22年12月8日、棋王戦挑戦者決定トーナメント敗者復活戦で藤井が勝利している。

「王将戦の前哨戦として注目されましたが、藤井五冠の長所がいかんなく発揮された一局でした」

 と語るのは、藤井の師匠である杉本昌隆八段(54)。

「角換わりの難しい将棋を、一手一手丁寧に読み進めていた。ほぼノーミスではないでしょうか」

 と弟子に賛辞を贈る。一方、自身と同世代の羽生についても、

「前年が悪すぎただけで、本来の力が発揮されたら現在の勝率は当たり前。同世代には強い棋士が何人もいますが、その中でも羽生先生が特別であることは共通認識。私も若い頃は、羽生先生との対局前夜はうれしくて眠れませんでした」

藤井について羽生に聞くと…

 そんな杉本八段の羽生九段との勝敗は、失礼ながら0勝8敗(準公式戦含む)。

「先生が対局中に呟(つぶや)くのは有名ですが、あるときも私が中盤で明らかな悪手を指したのに『うんうん』『あっ、そうか』と。相手のどんな手にもその真意を探ろうとする姿勢が見える。おかげで勝勢だった私は“羽生マジック”で逆転負け。即詰みを逃して200手以上で負けた将棋もあります。私の財産ですね」

 19年の対局後には、対戦相手と会食するのは珍しい羽生と食事をともにし、雑談の機会もあったという。話題は自然と藤井に及び、

「私が『先生のお若い頃と比べてどうですか?』と尋ねると『時代が違いますから』と。将棋界の注目度が高まった上、SNSなどの普及で、街で見かけた姿がすぐに拡散される。自分の頃より大変だ、と気遣っておられました」

 羽生九段からも藤井について質問があった?

「ごめんなさい。中身はお話ししにくくて……でも、彼を気にかけていただけていることは言葉の端々に感じましたし、ご自身が歩んだ道を彼が進むということは確信しておられました」

次ページ:藤井少年“羽生”で泣きやむ

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。