NHK「紅白」VS民放「年末年始特番」 業界のプロが指摘する「勝ち組番組」4つの共通点

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「高齢者は民放にくれてやる」と言わんばかり

「紅白歌合戦」の平均世帯視聴率が史上2番目に低い数字だったのは、むしろNHKの狙い通りだったのではないか――。今年の紅白は「高齢者よ、もう紅白は見なくていい」というNHKの決別宣言だったとしか思えないからだ。事前から「K-POPなどがあまりに多く、出演者が若者に寄りすぎている」という指摘はあったが、それだけではない。前半にK-POPないしは若いアーティストのグループを“固め打ち”した演出は、私のようなテレビマンの目から見ると明らかに、お年寄りを早めに離脱させようとしたとしか思えないのだ。【鎮目博道/テレビプロデューサー】

 80歳近い私の母親は、「知らない人ばかりが次々出てくるばかりか、出てくる人が全部同じに見えて違いが分からない。これでは私たちの年代の人はもう“見るな”と言われているとしか思えない」と深いため息をついた。NHKの“紅白から高齢者を排除する”という意図は見事に成功し、彼らはテレビ朝日系の「ザワつく!大晦日」か、テレビ東京系「年忘れにっぽんの歌」に流れた。そして「ザワつく」は、紅白の裏で最高視聴率となる11.2%を記録した。

「高齢者は民放にくれてやる」と言わんばかりの「若者グループ固め打ち」。その裏側には「若者を紅白に流入させよう」という意図もあったと思うが、多分、その効果はかなり限定的だった。そもそも、地上波テレビをあまり見ない若年層が紅白など見るはずもない。いや、仮にNHKの意図通りにチャンネルを合わせたとしても、結局、その後の紅白は若年層向けには全く作られていなかった。今回の紅白で評判になったのは、(1)鈴木雅之の「違う、そうじゃない」、(2)工藤静香、(3)桑田佳祐と同学年アーティストたちの共演、(4)YOSHIKI、HYDE、SUGIZO、MIYAVIによる「THE LAST ROCKSTARS」あたりだと思うが、すべてが40~50代の中高年に刺さる内容ばかりではないか。

中高年テレビマンの自己満足

 何のことはない「紅白歌合戦を制作する中高年テレビマンのオッサン、オバハンたち」が自分たちの見たいものを作っただけなのだ。高齢者はガッツリ切り捨て、若者に媚びるようなフリをして、今回の紅白歌合戦は中高年だけの自己満足に終わったのだ。

 紅白にすら「あなたたちはお客さまではありません」と切り捨てられた高齢者たちが不憫でならないし、NHKは「大切なのは今後受信料を払い続けてくれる若年層で、いつでも高齢者は切り捨てますよ」と、ホンネをあらわにした気がして恐ろしい。NHKの「公共性」とは一体なんなのだろう。高齢者がNHKを支えているのに。

 では、紅白の裏の民放はどうだったのかというと、今年も紅白との勝負を避けて安価にまとめた感じだった。「今年もダウンタウンの『笑ってはいけないシリーズ』が放送されなくて残念だった」というのが大方の感想だろう。唯一、お金がかかっていそうな番組はフジテレビ系の「逃走中 大みそかSP~お台場大決戦!~」だけだったが、フジ特有の「豪華なメンツを揃えてお祭り騒ぎをすればきっと見てもらえるだろう」という昭和のテレビマンぽい考え方が空回りしていた印象だった。出演者が多すぎて複雑になり、見ていて少しも「鬼ごっこ感」がなかった。フジは1月3日に小池百合子都知事を登場させて「豪華に演出されたババ抜き」をさせていたが、誰得なのだろう。いつになったらフジのバラエティの演出はバブル時代を脱却できるのだろうか。

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