ウクライナ戦争 経済はじり貧でも、「ロシアの継戦能力は衰えていない」と言われる根拠

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重要性が高まるメイド・イン・チャイナ

 ロシアでメイド・イン・チャイナの重要性が高まるばかりだ。自動車市場では中国製のシェアが3分の1を占めるようになっている。

 実体経済以上に中国の影響力拡大が顕著なのは金融の分野だ。国際決済網(SWIFT)から排除されたロシアでは急速な「人民元化」が進行している。

 中国企業はロシア顧客向けの価格設定を人民元でできるようになっており、ロシアの大企業は相次いで人民元建ての債券を発行している。

 人民元の国際決済通貨としてのシェアは第4位の円に肉薄する勢いだ。

 経済が中国の軍門に下りつつある状況下で、戦費はかさむ一方だ。軍事関連予算の拡大でロシアの2023年の財政赤字はGDPの2%を上回る可能性が指摘されている。

 ロシアが兵器不足をイラン(無人機)や北朝鮮(ミサイル)からの輸入で補おうとしていることは今や周知の事実になりつつある。

 英国防省が「ロシア軍は巡航ミサイルが不足しており、前線での防衛作戦を維持するだけで手一杯だ」との分析を行っていたことも判明している。

「ロシアが戦争を続行する能力に陰りが出てきた」との見方が有力になりつつあるが、はたしてそうだろうか。

 米国の民主主義防衛財団(FDD)は12月中旬「ロシアの高性能ミサイルの製造ペースは侵攻後にむしろ高まっている」との分析結果を公表した(12月21日付JBPRESS)。

 調査の対象となったのはロシアが2012年に実戦配備した空中発射式の中距離巡航ミサイル「Kh-101」だ。ロシア製ミサイルの中で最も性能が高く、標的への命中能力が高いとされている。

 FDDがウクライナ軍に撃ち落とされた Kh-101の製造番号を調べたところ、侵攻後の製造ペースが侵攻前の1.5倍に増加したことが明らかになったのだ。

  Kh-101の製造には禁輸対象となっている超小型電子部品が不可欠だ。並行輸入などを通じてロシアがハイテク兵器の製造に必要な部品を調達し続けているという「不都合な真実」の一端が明らかになった形だ。

 残念ながら、「ロシアの継戦能力が衰えた」と楽観できる状況ではない。

 ウクライナ戦争が長期化する可能性はますます高くなっているのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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