巨人、FA参戦せず…他球団が逆に警戒感「大型補強がないからこそ怖い」

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勝負は「2024年」か

 そんな巨人だが、「大型補強がないからこそ怖い」という声があることも確かだ。他球団の編成担当者は、以下のように話す。

「以前は小笠原道大(日本ハムからFA移籍)や杉内俊哉(ソフトバンクからFA移籍)のように成功した例もありますが、最近FAで移籍した選手で活躍しているのは丸くらいですよね。仮に、森友哉(西武からオリックスにFA移籍)や近藤健介(日本ハムからソフトバンクにFA移籍)が巨人に入団していても、ポジションが重なって試合に出られない選手が出てくるので、正直、そこまで怖いとは思いません。むしろ、思い切ってチームを作り変えて、どんどん若手を抜擢された方が後々のことを考えてもやりづらいですね。原監督もあと2年契約があるので、勝負は2024年だと考えているのではないでしょうか」

 2022年は投手成績こそ悪かったものの、プロ野球史上最多となる8人もの投手がプロ初勝利をマークしており、世代交代を予感させている。このタイミングで、高校ナンバーワン外野手の呼び声高い浅野翔吾(高松商)をドラフト1位で引き当てたということも、大きなプラス要因だ。

 また、長野と松田という大ベテランを獲得したのも、戦力強化というより若手への影響を考えた結果ではないかと、前出の編成担当者は語る。

「長野も松田も実績がありながら、二軍でも腐らずにプレーしており、その人望は誰もが認めるところです。長野は、若手と主力の間のコミュニケーションを円滑にする役割が期待できますし、松田は勝ち続けたチームのメンタリティを学ぶには、格好の存在と言えます。既に中島宏之という同じ大ベテランの右打者がいるのに、大ベテラン2人を獲得したのは、こうした狙いも少なからず、あるはずです」

 投手では、エースの菅野智之にかつてのような力がなく、野手陣もレギュラーは軒並みベテランとなっているだけに、2023年シーズンも苦しい戦いとなる可能性は高い。ただ、前述したように、若手の投手陣が力をつけてきていることは確かで、野手も主砲の岡本和真が、まだまだ若いというのは大きな強みだ。かつて“育成の巨人”と呼ばれたころのチームに生まれ変わることができるか、今後の動向に引き続き、注目したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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