「うる星やつら」リメイクは旧作超えられない? 「リコリコ」奮闘の陰で作画崩壊、公開延期が続く業界の課題【2022年のアニメ振り返り】

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真似のできないジャパニメーション

――さらに来年10月からのインボイス制度の導入で、若手アニメーターの暮らしが非常に苦しくなることが予想されます。

 アニメ業界の中でも興味を持たない人もいますが「おれは関係ない」という姿勢でいるのはどうなんだろうとは思いますね。俺はもちろん反対の立場の人間です。俺のブレーンは「うちの会社ではちょっと拘束させてもらえれば、インボイス代分を出しますよ、と言えばこれからは人が集まるんじゃないか」とは言っていましたね。

――インボイス分を払うのはいいですが、それをしてもマイナス分がゼロになるだけですからね……。伊藤さんは今年の映画のベストに中国のCG作品を挙げましたが、いわゆるジャパニメーションの需要が高まる中で、海外にそこを取られるということはあるのでしょうか?

 うーん。それはまだないのでは。作画やCGの技術的なものであったり、PVみたいなものだけだったら現時点でも超えているものがあるかもしれないですけど、中国は日本みたいな話を作ることはできないと思います。まず共産党があるので。

 イルミネーションスタジオ(「ミニオンズ」などを手がけるアメリカのアニメ会社)の人が見学に来て「日本のアニメ的なものを海外でやりたい」と話されたんですけど「Netflixでやっているような作品は一見すると日本のアニメっぽいが、何かか違う」と話していました。

 手法だけ真似ても、なぜかできないんです日本のアニメって。それは結局は個人に帰結して、システムに帰結する問題ではないのかもしれないですけど。

――今年の映画ランキングを見ると「すずめの戸締まり」以外はすべて人気作の続編になっていました。映画でもテレビアニメでもオリジナル作品は作りにくい状況ですか?

「リコリコ」のヒットはありましたが、難しいですね。オリジナルを作るノウハウは、作り続けなければなくなるので、頑張って作り続けるしかない。

 若い人にもオリジナルをやりたいという人はいて、それこそ「呪術廻戦」の朴性厚監督は自分の会社を立ち上げて、「ディズニー+」でオリジナルの作品をやるという記事が出てましたね。ツイッターで「どこかの会社からメインスタッフがごそっといなくなる」というどなたかのつぶやきがありましたが、照らし合わせると、それは「呪術廻戦」のことだったんですね。本当かどうか知りませんけど。

「チェンソーマン」や「うる星やつら」のOPを担当した山下清悟さんもオリジナルを作っていると聞くので、勢いのある人はいますよ。若いデジタル畑のアニメーターはみんな参加するのでは。楽しみです。あ、そうそう。シリーズのアニメで今年個人的に良かったのは山田尚子監督の「平家物語」ですね。「犬王」、「鎌倉殿の13人」という平家物語イヤーでも目立ってましたね。

――ありがとうございます。最後に伊藤さんの2023年はどうでしょうか。

 来年は宮崎駿さんの新作が楽しみですね。あとスタジオポノックの新作はいつでるのか気になってます。個人としてはコミックNewtypeで連載中の漫画「ワンダーX」の原作作業をしながら、新作映画の準備を進めます。春には作画INの予定ですが、スタッフ募集中です! 1話から3話まで読めるので、「ワンダーX」も読んでください!

――2023年はこの企画も10年目なので、ぜひ阿佐ヶ谷ロフトあたりでイベントでもしたいですね(笑)。本日はありがとうございました!

徳重龍徳(とくしげ・たつのり)
ライター。グラビア評論家。大学卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。記者として年間100日以上グラビアアイドルを取材。2016年にウェブメディアに移籍し、著名人のインタビューを担当した。現在は退社し雑誌、ウェブで記事を執筆。個人ブログ「OUTCAST」も運営中。Twitter:@tatsunoritoku

デイリー新潮編集部

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