「うる星やつら」リメイクは旧作超えられない? 「リコリコ」奮闘の陰で作画崩壊、公開延期が続く業界の課題【2022年のアニメ振り返り】

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「鬼滅の刃」を目指すのはいいけれど

――ちょっと広くアニメ業界全体の話も聞きたいのですが、変化はありましたか?

 情報としてはオープンになってるので喋っていいと思いますが、今年、主にアニプレックスの作品を手がけるアニメスタジオの「A-1 Pictures」の社長が交代しました。「劇場版ソードアート・オンラインプログレッシブ 冥き夕闇のスケルツォ」の公開延期が主な理由だと聞いています。さすがに9月10日公開の映画の延期を8月22日に発表というのもなかなかないですよ。

 もろもろ手がける作品がキャパオーバーになっているんです。まず制作側に要求されるクオリティが高いという問題はあいかわらずですが、どのスタジオでもそれに応えられるわけではないからA-1に仕事が振られるのです。

 また、コロナのタイミングでみんなだいぶ時間感覚がおかしくなっているんではないかと。数年前の感覚だと3か月くらいで終わっている作業が半年かかったりすることも。大晦日に放送予定だった「Fate/strange Fake - Whispers of Dawn -」も放送延期になりましたしね。

――ええ。アニプレックスを支えた「A-1 Pictures」が崩壊すると、日本のアニメ業界はやばいのではないですか?

 かたや、クローバーワークス(注:A-1 Picturesから分かれたアニプレックス傘下のスタジオ)では「その着せ替え人形は恋をする」や「ぼっち・ざ・ろっく!」を作っている梅原翔太プロデューサーの生きのいい若いチームがあり、「明日ちゃんのセーラー服」の黒木美幸監督もいい仕事をしてましたよね。

 自分たちの頑張りが作品のクオリティに直結しているチームで作品づくりしているスタジオと、はなから高いクオリティを要求されて、いやでも頑張らなければいけないタイトルを渡されたスタジオだと、後者はしんどいですよ。

「鬼滅の刃」のように、予算的にも時間的にも人材的にも積み上げがあるからクオリティの高いアニメを作りましょうというのは理解できますが、「そうした会社に負けていられない」と過度な頑張りだけを制作側に期待するのはおかしい。だったら実現でき得るスタッフィングをしないと、そんなものできやしませんよ。

 かろうじてそれができる会社はクオリティを追求していますし、できない会社は「惑星のさみだれ」みたいになってしまう。作画崩壊が話題となりましたが、観てる側も悲しい気持ちになってしまうし、心配になりますよね。

 さらに今は円安で、海外に作業を振るにしても以前よりも余計にお金がかかる。「チェンソーマン」は一社提供だから作画や背景の単価は高いらしいんですけど、それでも「美術は今は海外に巻く方がお金がかかってしまう」と、とある美術の方から聞きました。

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