「うる星やつら」リメイクは旧作超えられない? 「リコリコ」奮闘の陰で作画崩壊、公開延期が続く業界の課題【2022年のアニメ振り返り】

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2022年の「アニメ」振り返り(後編:テレビ作品編)

 映画「劇場版ソードアート・オンライン〜オーディナル・スケール~」「HELLO WORLD」やテレビアニメ「富豪刑事 Balance:UNLIMITED」など、数々の作品を手掛けた伊藤智彦監督とともに、その年のアニメ業界を振り返るインタビュー企画。後編は「チェンソーマン」「リコリス・リコイル」などテレビ放送でヒットしたアニメについて。話はアニメ業界全体に及び、制作現場の危機的状況があらわに――。【徳重龍徳/エンタメ評論家】

――伊藤さんは以前からNetflixなどの配信サービスでは見られる人が限られるため、国民的なヒットアニメを生むのは難しいという話をされていました。今年は「ジャンプ系」×「テレビ東京」の組み合わせで「SPY×FAMILY」「チェンソーマン」とヒットが生まれました。

 まず少年ジャンプ、ジャンプ漫画はコンテンツの宝庫であるということですね。世界中を見渡しても、言い方はアレですが、こんな安価にしかも大量に作品を生み出しているところはないのでは? とみんな気づき始めた。

「チェンソーマン」はその最たるもので、MAPPAの一社提供なんですね。「鬼滅の刃」では製作委員会ではなくアニプレックス、集英社、ufotableの3社による出資で話題となりましたが、そこからさらに研ぎ澄ませて、集英社も入っていません。

 集英社と何らかの信頼関係があって「アニメはうちが全部お金を出します」とMAPPAが作っている。ある程度ヒットするという目算がないとできないですし、そこから収益が予想できるのだと思います。ジャンプにはそういう題材が既にごまんとあるし、原作を各社が取り合いになっているのだと思います。その上でいまだにドラゴンボールとかも作り続けられてますしね。

――集英社には「ジャンプ」とつく雑誌がいろいろありますが、これまで多くのアニメ作品を生み出してきたのは「少年ジャンプ」でした。そこにアプリ「少年ジャンプ+」が加わったことでより多くのコンテンツを供給できるようになったのは大きいですね。「少年ジャンプ+」では6月から、新連載は英語でも同時配信をスタートさせています。

 なので、これからは海外の人が「この作品、面白い」となったら、どこも挟まず「ジャンプ+」に直接コンタクトを取れる。ハリウッド、あるいはトム・クルーズみたいなスターからさえも直接やり取りすることも可能になるわけです。夢がありますよね。俺のブレーンは今後、集英社がアニメ制作会社を作るのではないかと予想してますね。

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