「コロナの病原性はインフルエンザより弱い」「高齢者が街に帰ってこない」 老年医学の権威が語る第8波の過ごし方

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コロナ自粛は刑務所以下

 食うに困った高齢者が、刑務所に入れば3食出してもらえるからと、万引きをしたりする事件がたまに起きます。とはいえ、刑務所では人生を楽しめない、と感じる人のほうが多いはずですが、コロナを怖がって外出をせず、宅配の食事ばかり取っているのでは、刑務所にいるのと一緒です。いや、刑務所では、高齢の受刑者が動けなくなると困るので、運動の時間があります。その意味では、コロナ自粛は刑務所以下です。

 しかし、これまで家にこもっていた人も、まだフレイルの状態で止まっているなら回復できます。

 フレイルとは、加齢とともに運動機能や認知機能が低下してきた状態で、正常な状態よりは低下していても、まだ要介護ではない段階です。とにかく動かないでいると、フレイルになりやすいのですが、頑張って運動すれば元に戻すことが可能です。

 私には『70歳が老化の分かれ道』という著書があります。その趣旨は、70代なら歩くことで回復できるということです。80歳を超えると、自粛した途端に要介護、というケースもままあるのです。

 ですから、なにはともあれ外に出ましょう。要介護になりたくなければ、家のなかで歩ける人は、まず外に出て歩くことです。

 現在、日本に要介護の人が500万人程度いるといわれ、このままではすぐに700万人ほどに増えるでしょう。1人につき年間約200万円の公費がかかるというので、財政的にも大変な負担になります。

意識的にコロナ前と同じ生活に

 そういうことも考えたうえで、岸田文雄総理は勇気をもって「新型コロナはすでに風邪並みだ」「インフルエンザよりも弱いのだ」というメッセージを発するべきですが、残念ながら、万が一の感染増加を怖がって言いません。

 しかし、政治家に覚悟がない以上、一人ひとりが自分の身を守るしかありません。そのためには、外に出て歩くこと。人と積極的に話をすること。おいしいものを食べたり、好きなことをして思い切り楽しんだりすること。

 特別なことをする必要はありません。コロナ前と同じような生活に、意識的に戻すことが大切です。

 私の著書『80歳の壁』がベストセラーになったのは、医者の言いなりになって自粛生活をしていては、体が弱ってしまう、と自覚した人が多かったからだと思います。この記事を読んでくださった方も、そう自覚されることを願ってやみません。この第8波を「80歳の壁」にしないためにも。

和田秀樹(わだひでき)
精神科医(老年医学)。1960年大阪生まれ。東京大学医学部卒。和田秀樹こころと体のクリニック院長、国際医療福祉大学大学院特任教授。高齢者専門の精神科医として30年以上、高齢者医療の現場に携わっている。50万部のベストセラー『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、著書多数。

週刊新潮 2022年12月29日号掲載

特別読物「コロナ『第8波』を『80歳の壁』にしないために」より

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