「タモリ倶楽部」はついに40年…なぜタモリの番組はどれも長続きするのか

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爆笑させない大物芸人

 特異性はまだある。ビートたけし(75)、明石家さんま(67)とともにビッグ3と呼ばれる大物芸人ながら、ゲラゲラと笑わせることがない。若い当時に「R1グランプリ」に出場していたとしても、勝ち上がるのは難しかったのではないか。

 1976年のデビュー当初に見せていた「4カ国語麻雀」は巧みな話芸に感心させられたが、笑わせる芸とは言えなかった。「イグアナのモノマネ」も絶品だったものの、せいぜいクスリとさせる程度。「ハナモゲラ語」もそうだった。

 そもそもタモリの芸はスナックなどで披露し、仲間を喜ばせることを目的とした「密室芸」。なので、本人もテレビで爆笑を得ようとは思っていなかったはずだ。

 その分、タモリは芸人としては珍しくクセもアクもない。食べ飽きないコメの飯のようなものだ。何にでも合う。バラエティはもちろん、音楽番組にも教養番組にも。インテリという大きな強みもある。これも出演番組が長寿番組化する理由に違いない。

実は日本人的な芸人

 皇氏らタモリを知る人たちの人物評は「常識人」。なるほど、46年の芸能生活でトラブルの類とは無縁だ。大物にありがちな横柄な振る舞いをするという話も聞いた試しがない。マスコミとケンカをすることもない。

 局側としては安心して番組を任せられる。これも番組が長寿化する理由にほかならない。トラブルで自滅する芸人が多いのは知られている通りである。

 1980年代にはさだまさし(70)と小田和正(75)が生理的に嫌いであることをギャグにしたものの、ファンから反発の声が上がり始めた途端、口にしなくなった。やはり常識人なのである。

 常識に抵抗しないタモリは結果的にアンチがいなくなっていった。テレビ業界内にも。これも番組が長寿化する背景にある。敵がいると足をすくわれかねない。

 タモリのデビューは31歳の時。現在の40代以下は物心が付いた時からタモリがいた。文字通り国民的タレントである。そもそも、ふざけながらも常識を重んじ、知識欲旺盛で、仕事を大切にするのだから、日本人的なのだ。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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