村田兆治、池永正明、柴田保光…2022年に他界した野球人の記憶に残る“名場面”

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1073日ぶりの白星

 2022年も残りわずか。暮れ行く年の瀬を前に、今年惜しまれつつ他界したプロ野球人3人の現役時代の記憶に残る名場面を再現する。【久保田龍雄/ライター】

 最初に登場するのは、“マサカリフォーク”を武器にロッテで通算215勝を記録した村田兆治さん(11月11日逝去、享年72歳)である。23年間の現役生活で数え切れないほどの名場面がある村田さんだが、その中から、右肘手術からカムバック後、気迫の完投で1073日ぶりの白星を挙げた1985年4月14日の西武戦を紹介する。

 一時は「もうマウンドに立てないのでは」と絶望のどん底を味わい、「右肘にメスを入れて復活した投手はいない」といわれた時代に、奇跡の復活を信じてトミー・ジョン手術を受けた村田さんはこの日、投手生命をかけて先発のマウンドに上がった。

 渾身の直球で打者の内角を突き、追い込んでから伝家の宝刀・フォークで仕留める投球が冴えに冴え、7回まで8奪三振の無失点に抑える。

 だが、落合博満の2ランなどで4対0とリードした8回、「完封を意識し過ぎて」連続四球をきっかけに2点を失った。投球数はすでに100球を超えており、腕も痺れていた。

 しかし、「これまで応援してくれた人たちのために必死だった」という村田さんは、気迫を前面に出して2死満塁のピンチを切り抜けると、9回2死、最後の打者・スティーブを二ゴロに打ち取り、座右の銘「人生先発完投」を体現する形で、値千金の復活勝利を挙げた。

「まだ実感が湧かない。信じられないよ」と思いのたけを絞り出すように口にした36歳の右腕は、ウイニングボールを躊躇することなくスタンドに投げ入れた。「この1勝はみんなへの恩返し。次の1勝が自分の勝ち星」という理由からだった。

 ここから無傷の11連勝を記録した村田さんは、日曜日に登板するたびに勝利を重ね、“サンデー兆治”と呼ばれた。

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