私の家に電気が来たのは3時間だけ。日本のカイロはありがたい…キーウ在住「ボグダンさん」が語るウクライナの現在

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 ロシアによるウクライナ侵攻が開始されて間もなく、デイリー新潮は首都キーウ在住でボランティア活動をするパルホメンコ・ボグダンさんに取材。「日本で最も有名なウクライナ人『ボグダンさん』が流暢な日本語でキエフからレポートを続ける理由」(3月3日配信)を報じた。侵攻から間もなく10カ月、ボグダンさんに再び現状を聞いた。

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ボグダン:12月7日、今、朝の10時28分です。気温はマイナス2度、今日は雪がたくさん降っています。こちらでは11月にマイナス15度ということもありますから、今年は例年よりも暖かいほうだと思います。たぶん神様もウクライナに味方してくれているのではないでしょうか。

――ウクライナ最南端のクリミア半島が、北海道最北端の稚内と同じ緯度と聞く。酷寒ではないのだろうか。

ボグダン:キーウは北海道と同じくらいの寒さと考えていいと思います。僕が勤めていた前の会社の上司が北海道の方で、キーウにいらした時に北海道と似ているとおっしゃっていました。車も四駆が多く、冬は外を歩かないという生活スタイルも似ています。

――現在、ロシアからの攻撃はどうなっているのだろう。

ボグダン:昨夜、ドニプロやザポリージャ、オデーサなどが爆撃を受け、キーウでも空襲警報が鳴りました。今、電力不足のため、生産工場のラインは夜中稼働に変更されているんです。それを見計らってロシアが攻撃をしてくるという状態が、この1週間ぐらい続いています。

――キーウの電力事情はどうなっているのか。

3時間しか電気が来ない

ボグダン:ウクライナの電力システムは、もともと核戦争が起きた時を想定して作られた、ある種の循環システムになっているんです。ある地域の発電所がダメになっても、他の地域の発電所から電力が供給されます。そのため、攻撃を受けていない地域も、攻撃を受けた地域が出ると、その分の電力が失われるわけです。2日前の12月5日、サッカーW杯で日本対クロアチア戦が行われていた時、ウクライナは70発ものミサイル攻撃を受けました。そのうち61発は打ち落としましたが、9発はモルドバなどに着弾しました。その影響で昨日、僕の自宅には3時間ぐらいしか電気が来なかったんです。

――3時間しか電気が来ないと……。

ボグダン:電気が止まると通信施設、携帯電話やプロバイダーも止まってしまいますから、こうした取材も受けられません。仕事にも差し支えますが、水道も止まってしまうので生活もままならなくなります。

――電力不足はいつ頃からなのか。

ボグダン:大規模攻撃があった10月11日を機に、1日1~2時間の停電が始まり、着弾する数が増えてくるたびに停電の時間が長くなっていきました。この3~4週間は、半日しか電気が来ない状態でした。オデッサは昨日、2日ぶりに電気がついたと聞きます。ポーランド沿いのリヴィウですら、1日8時間の停電が起きているそうです。地区によって状況は異なりますが、停電の規模は拡大しています。

――電気が止まると、暖房はどうなるのか。

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