日本初の“ろう者俳優”は「silent」をどう観たか 想と紬の手話は「全身全霊」

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「ろう者=暗い」は誤解

「愛していると言ってくれ」(TBS・1995年放送)、「星の金貨」(日本テレビ・1995年放送)、「君の手がささやいている」(テレビ朝日・1997年放送)、「オレンジデイズ」(TBS・2004年放送)などこれまでも、ろう者や手話がテーマの人気ドラマは多数あったが、忍足さんは疑問を抱くこともあったそうだ。

「耳が聞こえないキャラクターが出るドラマや映画を見て感じたのは、『どうしてろう者は暗く、孤独で寂しいといったイメージなんだろう』ということでした。作品の中でそういったイメージで描かれることで、ろう者について固定概念を持たれてしまうのではとすごく傷ついたこともありました。当然ですが、耳が聞こえない人がみんな悲しみながら生活しているわけではありません。やかましいくらいとっても明るい人もたくさんいます」

 もっとも“耳が聞こえない人=手話を使う”というのも、ドラマや映画によって生まれがちな誤解の1つだという。

「聞こえない人と一口で言っても、生まれつきのろう者、難聴、中途失聴者、老人性難聴、突発性難聴などの方もいます。ろう者の中にも手話が分からない人もいれば、言葉を流暢に話せる人もいます。要するに、育ってきた環境や聴力レベルによって、やりやすいコミュニケーションの方法があるわけで、手話を使うかどうかは人それぞれなんです」

手話の演技

 ろう者俳優の起用だけでなく、「silent」では手話の描き方にもこだわりを感じられるという。

「手話が途切れることなく、最後までしっかり写っているのが良いですね。目黒さん、川口さんはじめ俳優の皆さんは『手話とはろう者にとっての第一言語である』ということをきちんと理解し、手話表現ひとつひとつを噛みしめながら演技していると感じました。短期間で手話を習得されるのはエネルギーのいることですが、責任を持って全身全霊で表現されているからこそ、伝わってくるものがあるんだと思います」

 忍足さんがドラマの中で心に残っているのは、想と紬がカフェで会うシーンだ。

「想くんが音声認識アプリの『UDトーク』を使って話しをしようとスマホを差し出すと、紬ちゃんが『(使わなくて)いいよ』と手を振って表現するんですね。『私が手話をするから見てて』という嬉しそうな紬ちゃんからは、想くんのために覚えた手話で話したいということが伝わってきて、微笑ましかったです」

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