藤井聡太五冠が竜王防衛 敗れても評価される広瀬章人八段の“藤井研究”

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 竜王戦七番勝負(主催・読売新聞社ほか)の第6局が12月2日から行われ、藤井聡太五冠(竜王・王位・叡王・王将・棋聖=20)が挑戦者の広瀬章人八段(35)を下して対戦成績を4勝2敗とし、初防衛。将棋界最高となる賞金4400万円を獲得した。これまで藤井は出場したタイトル戦すべてに勝利し、通算タイトル期数は11期(奪還5、防衛6)となった。20歳4カ月での竜王戦の防衛は、永世竜王の資格を持つ渡辺明二冠(名人・棋王=38)の最年少記録21歳7カ月を更新した。敗れた広瀬は4期ぶりの竜王復帰を目指したが力及ばなかった。【粟野仁雄/ジャーナリスト】

スペイン戦は「ニュースで」

 これで年内のタイトル戦はすべて終わった。藤井は来年1月8日から、注目の王将戦七番勝負(主催・毎日新聞社など)で羽生善治九段(永世七冠=52)の挑戦を受けることになる。

 竜王戦の第6局は鹿児島県の薩摩半島に位置する指宿市で、12月2日、3日の両日にわたって行われた。会場は砂むし温泉で知られる旅館・指宿白水館だ。

 先手は藤井。角交換から両者「腰掛銀」の戦型で、途中まではほとんど同型の盤面だった。同型のまま進行すれば先手が有利になることが多く、後手の広瀬はそれを嫌ってか少し手を変えていった。双方、読み込み済みだったのか、序盤の進行は早かった。広瀬は新手を繰り出したが、2日目からの藤井は見事な差し回しで攻め立て、広瀬に反撃を許さずに差を広げて寄せ切った。

 スポーツ紙は藤井の勝利を、W杯で大活躍しているサッカー日本代表にたとえた。2日目から一挙に攻め立てて勝利に結びつけた藤井の将棋が、後半にギアチェンジして鮮やかに逆転勝利したドイツ戦やスペイン戦の「森保ジャパン」に似ていると見たようだ。

 対局後、広瀬は「飛車を取った手順が甘い考えだった。大長考もよくなくて、形勢を損ねてしまった」と反省していた。広瀬は大のサッカーファンとして知られ、対局前に「今朝のサッカーを見ましたか?」と尋ねられると、「さすがに見るわけにはいかなくてニュースで(スペイン戦の勝利を)知りました」と語っていた。スペイン戦は対局1日目の早朝のことで、質問者も愚問とは前置きしていた。

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