「板を長くしてジャッジにアピール」「投資や起業も視野に」 モーグル銅・堀島行真の革新性とは(小林信也)

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ジャッジ・アピール

 4年後、北京五輪での雪辱に向け、堀島は大胆な変化を選択した。例えば、周囲の反対を押し切り、スキーの板を10センチ長くした。172センチから182センチへ。板は短いほど取り回しがしやすい。だが、あえて難しい板を選んだ。

「長いスキーを選んだのは、ジャッジ・アピールのためでした」、堀島は言った。

「堀島は他の選手と違うターンをしている、難しい技術を持っている、というイメージを定着させるためでした。自分の名前をどう売り込むかも重要なのです」

 エアの出来栄え、ゴールまでのタイムが見る者にはインパクトがあるけれど、モーグルの得点の6割は、コブの斜面を滑る際のターンの得点で占められる。

「板を長くしたことを、一緒に戦う選手が最初に気付きました。それからコーチが気付いて、最後にジャッジに伝わりました」

 微妙な言い回しでモーグル界の現実を語った。まだ歴史の浅いモーグルで、ジャッジは必ずしもトップ選手の技術の本質を理解していない。トップ中のトップが、他の選手とどれほど繊細な技量の違いを秘めているか、そこにある決定的な差が実は把握されにくい。だから、新鋭の堀島が絶対王者キングズベリーと並ぶ技量の持ち主だと、目に見える形でジャッジに印象付けることができたら大きなアドバンテージを得る。

 堀島は北京五輪の1年前、板の長さを5センチ戻し、177センチにした。そして北京では、苦しみながらも決勝3本目まで勝ち残り、銅メダルを取った。

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