「定年になる夫との二人暮らしが心配」 58歳の妻の背中を押したカウンセラーの言葉とは

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 長年連れ添った相手との冷めた関係というのは、川柳やマンガ、ドラマ、漫談等々で定番ネタとして扱われることが多い。数多くの家族問題の相談に乗ってきた東京家族ラボの池内ひろ美さんのもとをこの日訪れたご婦人もその一人だ。

 定年を迎える夫との二人暮らしに不安を感じるという彼女に池内さんはどう答えたか。【SNS時代の家族問題/第9回】

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58歳妻の抱える不安とは

 人生100年時代を迎えて、長く一緒に暮らす夫婦の悩みも増えていくのかもしれません。

 結婚し、子供が生まれ、子供たちが育ち巣立っていった後の夫婦はどのように過ごしていけばいいのでしょう。

「長男は結婚して隣町に新居を構えましたし、長女は結婚していませんが就職を機に一人暮らしをはじめ、私たち夫婦だけの生活となりました」

 それは素晴らしいことですね。

 親に頼り切ることなく、自立したり結婚したりするお子様をお育てになられたご両親はとても立派です。

 相談来所した58歳の女性は、ボブカットにそろえた黒髪を少し揺らして、かぶりを振ります。小さな声で言葉少なく語ってくれます。

「夫は来年、定年退職を迎えるんです」

 それも、本来なら素晴らしいことです。

 世帯主が現職にあり安定収入のある間に子育てを終え、子供たちが自立していくことができたのは、ライフサイクルで考えると精神的にも経済的にも理想的です。

 でも彼女は笑顔ではありません。テーブルの上に置かれたコーヒーカップあたりをじっと見つめたまま視線を動かすこともありません。表情は硬く、言葉を選びながら、少しずつ話してくれます。

「夫が定年退職したら、再就職しないで自宅にずっといると思います。家の中で夫と二人きりになります。私はどうしたらいいんでしょう」

 2歳年上の夫は、二人きりになると怖い人なのでしょうか。暴力を振るったり暴言を吐くような男性だったら、二人きりで生活を送るのを不安に思うかもしれませんね。

「いいえ、夫は暴力的ではありません。私は、妊娠してから結婚し、すぐ長男が生まれました。当時は“できちゃった結婚”なんて言われましたね。年子で長女も生まれました。それからずっと育児と家事に忙しくて、あっという間に30年近く経ちました。でも、夫と二人きりの生活を送るのは初めてなんです」

 なるほど。

 夫婦のライフサイクルとしては、「回帰期」を迎えるにあたっての不安があるということですね。彼女には、ご夫婦のライフサイクルを説明させていただいたほうがよさそうです。

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