米ゴルフPGAツアーの「PIP」とは何か? 不可解なルールで2年連続1位はタイガー・ウッズ

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半額は支払われず

 米スポーツイラストレイテッド誌によると、その「義務」は主に3つあるという。

 1つ目は、PGAツアーの中であまり人気のない大会にあえて出場すること。2つ目は、ジュニアやアマチュア向けのゴルフクリニックやトークショー、サイン会といったファンサービスに参加すること。そして3つ目は、トッププレーヤーの出場が義務付けられる全20試合への出場、あるいはそれに相当するビッグ大会への出場だ。

 とはいえ、昨シーズンわずか3試合しか出場できなかったウッズが、今シーズンいきなり20試合以上に出場できるとは考えにくい。20試合への出場義務を果たすことができなければ、ウッズは1500万ドルのボーナスのうちの75%、つまり1125万ドルを受け取ることができなくなるということだろうか。いやいや、ウッズがデビューした1996年から四半世紀以上の間、「ウッズ対策」を決して怠らなかったPGAツアーが、今さらウッズの不利益になることを良しとするはずはない。

 傷病などの特別な理由があれば、「モナハン会長が例外を認めることができる」という伝家の宝刀がちゃんと設けられており、ウッズの場合は今季の出場試合数が何試合であってもボーナスが全額支給されることだろう。

 そういえば、2021年のPIPでトップ10に入り、ボーナスの対象になった上でリブゴルフへ移籍したデシャンボーやバッバ・ワトソン は、今年10月ごろ、「いまだに去年のPIPのボーナスの半額をもらっていない」と不満を漏らしていた。

 どうやら昨年は、ボーナスの支払いが「50%ずつ」の2段階だった様子だ。昨年のPIPで5位になり、350万ドルのボーナスを勝ち取ったはずのデシャンボーは、「すぐに半額の175万ドルをもらったが、いつまで経ってもPGAツアーは残りの半額を払ってくれない。これは単なるお金の問題ではなく、人間としての信条が問われる問題だ」と激怒していた。

 だが、PGAツアーに背を向けてリブゴルフへ移った彼らは、もはや義務を果たすどころか出場資格さえ停止されており、そんな彼らにボーナスの残額が支払われることは今後も決してないだろう。

 2022年のPIPのボーナスの対象となった23名も、ボーナスの全額を受け取りたければ絶対にPGAツアーに留まるべきで、なんだかんだ言っても、やっぱりPIPは究極のリブゴルフ対策となりそうである。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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