全国旅行支援、なぜ北海道の中学校でミスが起きたのか 背景に複雑すぎるシステムが

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 北海道余市町の町立中学校で、よもやの出来事。楽しい思い出となるはずの修学旅行に絡んで、一部の生徒の“秘密”がさらされた。

 経緯はこうだ。中学では10月18日から2泊3日で岩手県の盛岡や平泉を巡る修学旅行を実施。政府の「全国旅行支援」で土産物などに使える6千円分のクーポンを現地で生徒に配ることにした。が、旅行を手配した「日本旅行北海道」から出発直前に「就学援助を受けている生徒は公的支援の二重取りになるためクーポン配布の対象外」だと知らされる。そこで31人の生徒のうち、生活保護受給世帯などを支援する就学援助を受けている生徒7人に宿泊先で説明し、残る24人にクーポンを配った。

 すると旅行後、父兄から「就学援助受給者の特定につながる」と学校に相談があり、実は旅行会社の担当者が制度を誤解、全員支給を受けられることが判った。

「47種類のルールがある」

「生徒の皆さんには悲しい思いをさせてしまい、心よりおわび申し上げます」

 と話すのは、親会社の日本旅行の広報。なぜ、ミスは生じたのか。

「当該旅行は18日からで、全国旅行支援が10月11日に始まることになったため、担当社員はその適用を考えました。制度は各県で運用が異なるので、担当者が日本旅行北海道本社に問い合わせたところ、本社側はあらかじめ用意したマニュアルをもとに対応。そこには“各都道府県に確認するよう”指示が書かれていたものの、担当者がそれを怠り、経験則から二重に公的支援を受け取ることはできないと誤解してしまったのです」

 業界関係者によると、

「全国旅行支援については、都道府県ごとにワクチン接種証明の取り扱い方やクーポンの受け取り方が違い、47種類のルールがあると言っていいほど。とはいえ、自治体窓口に不明点を聞いても即答は必ずしも得られない。国から各県に裁量が委ねられているため担当者も逆によく分かっておらず、回答に数日かかることも。現在も状況は同じです」

出張には使えない?

 航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏は、クーポン自体の問題を指摘する。

「平日の旅行1日当たり3千円のクーポンがもらえますが、一部の企業には“これが所得扱いされて課税対象になるのでは”という懸念があります。従業員が利用すると会社全体ではかなりの額になるため、実際に“全国旅行支援は出張に使うな”とお達しを出すところも。今回の修学旅行のトラブルにしたって、クーポンが金券としてどういう性質を有するのか、政府が明快な見解を出していないところにも原因がある」

 とばっちりを食った生徒たちこそ気の毒だ。

週刊新潮 2022年12月1日号掲載

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