世界の人口は2050年頃「90億人」で頭打ちか その意外な原因と新たな難題とは

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精子の数が減少!?

 出生率が低下する際、主役を演じるのは女性であることは今や定説となっているが、男性の側にも気になる研究結果が出ている。

 2017年7月、学術誌「ヒューマン・リプロダクション・アップデート」に「1回の射精に含まれる精子の数が1973年から2011年までに50%以上減少した」とする論文が発表された。発表当時は「人類滅亡の危機か」と騒がれたが、今年11月にその論文のレビュー結果が公表された。それによれば、男性の精子数に言及した2014年から2020年までの約3000件の論文を精査したところ、「精子の数は1970年代に比べ60%以上減少していた」ことが判明した。

 この論文は「何が精子数を減少させているか」について言及していない。「環境や喫煙・肥満などの生活習慣が関係している」との指摘があるが、その原因は今のところ明らかになっていないのが実情だ。だが、これが事実だとすれば、世界の人口予測に大きな影響をもたらすことは間違いない。

 出生数の低下で「人口爆発」は回避できるものの、新たな難問を抱えることになる。

 世界では出生率の低下が進む一方、平均寿命は上昇を続けており、世界の人口に占める65歳以上の割合は年々上昇している。世界の65歳以上の人口は7億7000万人を超えており、1980年の3倍に増加した。全人口に占める比率は10%で、2030年に12%、2050年には16%に上昇するとみられている。

 世界全体で少子高齢化が急速に進んでいるのだが、国連の予測以上に出生率が低下するような事態になれば、この傾向は一層助長されるだろう。

 20世紀は「人口爆発の世紀」と呼ばれたが、21世紀は「高齢化の世紀」となると言っても過言ではない。国際社会は、史上初めて経験することになる「老い」の問題を乗り切ることができるのだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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