テレビ東京が「W杯日本勝利」を静止画像でしか扱えないワケ 勝村政信MCのサッカー番組はどう切り抜ける?

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 嬉しい番狂わせに日本中が湧いた。11月23日に行われたFIFAワールドカップ、対ドイツ戦での快挙である。翌日、各局のニュース番組やワイドショーは朝から晩までサッカー一色に染まったが、ほぼ“スルー”した民放が一社だけあった。テレビ東京である。国民的慶事とも言える大ニュースを扱えなかったのには、止むに止まれぬ事情があったという。

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「ドーハの悲劇」を生中継した局なのに…

 今回の快挙は、早速、「ドーハの奇跡」と呼ばれ始めている。1993年、同じ場所で行われたW杯アメリカ大会アジア地区最終予選の試合終了間際で、日本は対戦相手のイラクに1点を許し、ほぼ手中に収めていた本戦初出場を逃した。あの「ドーハの悲劇」の雪辱を果たしたのだ。

 29年前、日本サッカー史に刻まれる歴史的試合を地上波で生中継した局こそがテレ東だった。平均世帯視聴率48.1%は、今も破られていない開局史上最高の数字だ。だが今回、テレ東のニュース番組は、あの因縁の地から飛び込んできた快挙をスルーし続けた。

 厳密に言うと、ちょこっとだけ扱った。朝の「Newsモーニングサテライト」で東京・港区の公式パブリックビューイング会場からの映像とともに約2分間、夜のスポーツ番組「みんなのスポーツ Sports for All」で、長友佑都や堂安律が試合翌日に会見した様子などを約2分間。看板番組「ワールドビジネスサテライト」では、「W関連株が上昇」という経済ニュースでは扱ったものの、試合については一切振り返らなかった。

 試合の様子を振り返る場面も静止画のみで、浅野拓磨の劇的な逆転ゴールの動画はなし。いったいなぜ……。テレビ東京の局員が、「実は…」と内情を打ち明ける。

勝村政信はドーハに行っていたが……

「ウチは試合映像が使えないんです。W杯の放映権が回を重ねるごとに高騰していることはつとに知られていますが、実はニュース映像を流す権利にも多額の費用が発生するのです。今回は1億5000万円とも言われている。地上波としてメンツを保つためにも買うべきという声もあるかもしれませんが、それを考慮しても高すぎて手が出せないんです」

 だから、静止画を使ってお茶を濁したのだ。

「ロイター通信などから数万円出して写真を買うわけですが、テレビが静止画を流し続けるわけにもいかない。扱うにしても、短い尺にせざるを得ないのです」

 そんなテレ東局員らが、「どうやり抜けるのか」と心配している番組がある。毎週土曜深夜0時25分から放送している「FOOT×BRAIN 」だ。サッカー好きで知られる俳優の勝村政信がMCを務めるサッカー専門番組で、今回、勝村は番組スタッフとともに、1泊4日のドーハロケを敢行した。

 勝村は今回の旅行に、同じサッカー好きとして親交の深かった、2018年に急逝した俳優の大杉漣さんの遺影を持参。「ともに観戦」している様子を度々Twitterに投稿し、それを一部スポーツ紙が報じて話題にもなっている。ドイツ戦を観戦後、勝村は帰国の途についたが、はたして「動く映像」なしで自身が目撃してきた熱狂をどう伝える?

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