アフリカで誘拐された日本人男性は間一髪で救出された 現地警察に懇願した元公安警察官の証言

  • ブックマーク

Advertisement

スタングレネード

「刑事局長と面会し、日本人が誘拐された経緯を説明したところ、その3日前にもスウェーデン人が誘拐され、身代金が支払われて解放されたというのです。警察はその後ナイジェリア人2人を逮捕し、彼らの仲間がいる3つあるアジトを突き止めたというのです」

 すると、刑事局長は勝丸氏にさらにこんなことを言ったという。

「『誘拐された日本人の顔写真を至急見せて欲しい。今、重大な局面を迎えている』と。私はこれまでの経験から、特殊部隊がアジトに突入する寸前なのではないかと思いました。犯行グループは武装している可能性が高い。特殊部隊は、犯人が少しでも抵抗すれば、すかさず発砲します。そこで私は刑事局長に『どうか日本人の命を守ってください』と懇願しました。刑事局長は黙って聞いているだけでしたが」

 その後、特殊部隊が3つのアジトに突入。結局日本人は、誘拐されてから2日後に無事救出された。

「事件後、特殊部隊の責任者からも話を聞きました。特殊部隊は、アジトに突入するために待機していた時、アジア人がアジトに入って行くのを目撃したそうです。『あれは中国人か?奴らの協力者か?』と思ったようです。ところがその後、一旦突入作戦を中止せよという指令が来たといいます」

 勝丸氏の要請を受け、突入作戦に日本人救出という新たな指令が加わったようだ。

 特殊部隊が3つのアジトに突入する際、強烈な光と音声を放つスタングレネード(音響閃光弾)を投げ込むことになっている。人間は強烈な光にさらされると、6秒間身動きが取れないという。このスタングレネードは2000年5月、西鉄バスジャック事件でSAT(特殊部隊)や機動隊が突入する際、日本で初めて使われた。

「日本人が監禁されたアジトでは、スタングレネードが閃光を放つと、防弾服をまとった特殊部隊が日本人めがけてタックルするように体に覆いかぶさったのです。もし銃撃戦が始まっても、日本人の身の安全を確保するためです。結局、どのアジトでも銃撃戦は起こらず、ナイジェリア人ら7人が逮捕されました。特殊部隊が当初の予定通り突入していたなら、日本人の命は危なかったですね」

勝丸円覚
1990年代半ばに警視庁に入庁。2000年代初めに公安に配属されてから公安・外事畑を歩む。数年間外国の日本大使館にも勤務した経験を持ち数年前に退職。現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活躍中。「元公安警察 勝丸事務所のHP」https://katsumaru-office.tokyo/

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。