中日、「阿部寿樹」「京田陽太」を次々トレード…立浪監督の補強戦略は本当に成功するのか?

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立浪監督の意見が強く反映

「長年スカウト部門の中心だった中田宗男さんが、今年の1月末で退団したことが大きいですね。中田さんはこれまで多くの中心選手を獲得しており、落合博満GM時代にも、その方針に対して疑問があれば、しっかり意見できる存在でした。そんな中田さんがいなくなったことで、今年のドラフトでは立浪監督の意見が強く反映されたと言われています。実際、シーズンが終わってから立浪監督は候補選手の視察によく訪れており、マスコミに対してもたびたびコメントを出していました。二遊間の選手を多く指名したのも、立浪監督の意向が強かったのではないでしょうか。ただ、普段から多くの選手を見ているスカウトからすると、監督とはいえ、いきなり出てきて口出しされるのは、やはりやりづらいですよね。現場との意思疎通はもちろん大事ですが、最終的な判断は編成の責任者がするべきだと思います」(他球団の編成担当者)

 実際、筆者は、ドラフト前に立浪監督が有力投手の視察に訪れた現場に居合わせたことがあった。中日のスカウト陣は普段よりも明らかに早く球場入りしており、その投手の登板に合わせて、立浪監督を球場に迎え入れるための連絡を頻繁に入れるなど、そのせわしない様子からも現場のスカウトの大変さが伝わってきた。中日にとっても、これまでにないドラフトだったことは間違いないだろう。

「強い中日復活」はなるか

 一方で、長打に頼らずに投手を中心とした守りと、機動力を生かした攻撃で戦うという方針に舵を切ったのではないかという声があることも事実だ。

 新本拠地(ナゴヤドーム、現・バンテリンドームナゴヤ)になって2年目の1999年、落合博満監督就任1年目の2004年、そして、現時点で最後の優勝となった2011年は、投手力で守り勝ったという印象が強い。たしかに、チーム本塁打数を見てみると、1999年はリーグ5位(120本)、2004年はリーグ6位(111本)と少ないが、それでも今年の62本と比べると、はるかに多い数字だ。

 2011年も82本と少ないが、これは同年に導入された、飛距離が出ない「統一球」の影響が大きく、セ・リーグでは3番目に多い数字だ。これを見ても、やはりある程度の長打力は必要だということがよく分かる。

 中日の投手陣は、高卒2年目の高橋宏斗が侍ジャパンに選出されたほか、野手でも、高卒3年目の岡林勇希が最多安打のタイトルを獲得するなど、楽しみな若手が伸びてきているのはプラス材料だが、これまでのオフの動きを見ていると、不安要素が多い印象は否めない。「強い中日復活」に向けて、フロントと現場が噛み合う日はいつ訪れるのだろうか。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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