住宅ローンを抱えている人の不安を煽る報道ばかり…実際、変動金利はいつ、どれくらい上がるのか

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

生保の動向にも注目

 短期的に見ても、来春に日銀が政策金利を上げるかどうかは不透明だ。金利の上昇に耐えられるのは、ごく一部の大企業だけだろう。日本では中小企業の割合が99・7%と言われている。どこも経営が苦しいのは言うまでもない。

「中小企業はコロナ禍で大きなダメージを受け、緊急の融資を受けたところも少なくありません。そろそろ返済が始まっているのですが、余裕で返せる会社など皆無でしょう。メインバンクに相談して借り換えるにしても、担当者が『日銀が政策金利を上げたので、うちも金利を上げます』ということになれば、倒産が続出してもおかしくありません。住宅ローンも全く同じです。政策金利を上げるリスクが極めて大きいことは、日銀もメガバンクも充分に理解していると思います」(同・深野氏)

 前に見た通り、政策金利がマイナスのまま据え置かれたり、マイナス金利をやめるにしてもゼロ金利になったりするだけなら、住宅ローンの金利が上昇する可能性は減少する。

 更に住宅ローンの金利が抑えられる要因として、生命保険会社の動向も要注目だという。

 なぜ住宅ローンの金利と生保に関係があるのか、深野氏に解説してもらう前に、「国債が大量に買われると、一般的に金利は抑制されるか低下する」ということを理解しておきたい。

「不景気の影響もあって、日本の国債の利回りは1%を割り込む時代が長く続いていました。生保各社は契約者から保険料を受け取り、それを運用して契約者に配当します。損は許されないので、もともと生保は安全な日本の国債を好んでいました。ところが日本国債は利回りが低いので、金利の高い米国債の運用が長く続いていたのです」(同・深野氏)

不景気なら低金利

 それが最近、国債の金利は上昇傾向を示している。ブルームバーグの公式サイトを見ると、11月16日現在、《日本国債30年》の利回りは1・41%だ。

「米国債による運用は為替リスクが避けられません。国債の金利が1・5%に近づくと、生保は『これならリスクのある米国債を買う必要はない』と判断します。生保各社は米国債から、30年ものなどの日本の国債を買う動きが加速するでしょう。そうなると、金利の上昇は抑えられるはずです。住宅ローンの金利も同じであることは言うまでもありません」(同・深野氏)

 そもそも、アメリカの好景気がどこまで続くのかという問題のほうがよほど重要だ。

 Business Insider Japan(日本語版)は10月19日、「アメリカが1年以内に景気後退に入る確率は100%…ブルームバーグが分析結果を発表」との記事を配信した。

 もしアメリカの景気が減速すれば、日本の景気も悪化する可能性が出てくる。そうなれば金利上昇どころの話ではない。

「連合も経団連もベースアップを口にしています。来年の春闘は、ひょっとすると何十年ぶりかの大幅な給与上昇が実現する可能性があります。それでも物価高には追いつかないかもしれませんが、国民の収入が増え、経済が成長し、その結果として金利が上昇するのなら大歓迎です。しかし、今の日本経済は不安材料のほうがよほど多いでしょう。来春に日銀総裁が替わるにしても、任期5年の間に住宅ローンの変動金利は1%上昇するかどうか、というのが冷静な予測だと思います」(同・深野氏)

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 4 次へ

[4/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。