住宅ローンを抱えている人の不安を煽る報道ばかり…実際、変動金利はいつ、どれくらい上がるのか

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

金利上昇説の根拠

「失われた30年」という言葉がある通り、日本は長年、不景気が続いている。一方のアメリカは景気が過熱気味で、異常なインフレ状態になっている。

「日本では『投資』が必要ですが、逆にアメリカでは『貯金』が求められています。アメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度)は大幅な利上げを行ってきました。こうなると、銀行に貯金すればたくさんの利子が付きます。法人も個人もお金を使うことが減り、物価の上昇が食い止められるという狙いです」(同・記者)

 アメリカの政策金利の上昇は日本経済にも大きな影響を及ぼした。日米の金利差が大幅に拡大したことで、円を売ってドルを買う動きが急激に加速したのだ。今年1月だと1ドルは115円前後だったが、11月16日現在では140円前後となっている。

 経済界の一部からは「日本も政策金利を上げる必要がある」という声も出た。おまけに黒田総裁の任期は来年の4月までだ。来春、総裁が交代するのをきっかけにして、日銀は“プラス金利政策”に転換すると予測する者も少なくない。

 政策金利が上がれば、もちろん住宅ローンの変動金利も上がる。それだけでなく、「住宅ローンの固定型金利が上昇すれば、その後に必ず変動型も上がる」という“法則”が存在すると指摘する専門家もいるようだ。

 固定金利が上昇しているのは冒頭で見た通りだ。「変動型の住宅ローンでも金利は上がる」という報道が増える理由の一つだろう。

3年半の年収が消滅!?

 日本の住宅ローンは固定型より変動型のほうが圧倒的に多い。日本経済新聞(電子版)は11月6日、「住宅ローン膨張220兆円 日本、資産価値伸び悩み 金利上昇にリスク」との記事を配信した。文中には以下のような記述がある。

《日本では金利上昇リスクがある変動型を選ぶ人が7割を超え、金利が0・1%上昇すれば国内全体で利息負担が約1100億円増えるとの試算もある》

「おまけにロシア・ウクライナ戦争やアフターコロナの影響で、燃料や原材料の価格が大幅に上昇しています。一般的に物価と金利は連動していますから、この点からも『住宅ローンの金利が上昇する可能性が高まっている』と予測する専門家がいます」(同・記者)

 先にタイトルを紹介したTBSと女性自身の記事で、“過激”な記述があるのは後者だ。該当部分を引用する。

《変動金利0・5%で4000万円の35年ローンを組んだ人が、返済開始から5年で3%の金利になり、その後も金利が下がらなかったケースで考えてみよう。金利が0・5%から変わらなかったケースと比べて、30年で1582万2573円も総支払額が増えることになる》

 国税庁によると、日本の平均給与は461万円(男性567万円、女性280万円)。もし女性自身の指摘通り、約1600万円も返済額が増えてしまうことになったら大変な事態だ。何しろ約3年半の年収に匹敵するのだ。

次ページ:首を傾げる専門家

前へ 1 2 3 4 次へ

[2/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。