住宅ローンを抱えている人の不安を煽る報道ばかり…実際、変動金利はいつ、どれくらい上がるのか

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首を傾げる専門家

 Twitterでも不安視する投稿はかなりの数にのぼっている。ここでは3例を紹介しよう。

《利上げした時に住宅ローン変動金利の人、大丈夫ですかね?4~5千万で3~5%は大変です》

《日本の金利じわじわ上昇してくるんだろうな。さらにひどい不景気になりそう。住宅ローン破産者多数出ないことを祈ります》

《金利上げた瞬間に住宅ローン組んでる個人の消費者は地獄に突き落とされるパターン》

 そこでファイナンシャルプランナーの深野康彦氏に取材を依頼。住宅ローンの変動金利は、いつ、どれくらい上がり、どれくらい返済額は増え、対策をどうすればいいか解説してもらうためだ。

 ところが深野氏は「なぜ住宅ローンの変動金利が大幅に上がると断言する人がいるのか、率直に言って信じられません」と首を傾げる。

「住宅ローンの金利が上がる根拠として、『日銀がマイナス金利政策をやめる』との予測があります。しかしFRBが大幅に利上げした背景は、物価が7%とか8%とか、異常な上昇を示しているからです。日本でも物価は上がっていますが、それでも3%台にとどまっています。物価が上がっただけでは、さほど金利は上昇しないという調査結果もあります。金利が間違いなく上昇するのは、経済成長率がアップした時です。しかし、今の日本が好景気だと言う人は極めて少ないでしょう」

円安メリット

 おまけに日本の場合、物価上昇も止まる可能性があるという。

「インフレには『コストプッシュ型』と『ディマンドプル型』の2種類があります。前者は原材料の上昇、後者は需要の増加が原因です。今の日本で物価が上がっているのはコストプッシュ型で間違いありません。そして、コストプッシュ型は物価上昇が長続きせず頭打ちになるケースが少なくないのです」(同・深野氏)

 今の日本で年収が増えている人は稀だろう。物価が上がっても、誰も買ってくれなければ意味がない。

「『100万円でも200万円でも買う』というディマンドプル型の物価上昇は長期化する傾向があります。ところがコストプッシュ型は、『そんなに高いなら買わない』と消費者にそっぽを向かれたら終わりです。需要は減少し、物価上昇は鈍化します。物価上昇が鈍化すれば政策金利が利上げされるという予測の根拠が一つ減ります。つまり、住宅ローンの金利が上昇するという根拠も一つ減ってしまうわけです」(同・深野氏)

「円安を是正するため、政策金利を利上げしてほしい」という一部経済界の声も、場合によっては少なくなっていく可能性があるという。

「一般的に為替レートの変動は、デメリットが先に訪れ、メリットは遅れてやってくるという特徴があります。確かに今は輸入価格が高騰し、エネルギーや輸送コストが上昇。企業は大変な状況です。とはいえ、円安トレンドが長期化すれば、国内生産の復活が期待できます。良質の商品を海外で安く売り、稼いだ外貨は多額の円となって国内に戻ります。今の円安が続くとしたら、円安による景気回復も決して夢物語ではないのです」(同・深野氏)

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