日本が世界1位を走り続ける「経済複雑性」とは? 一方、マイナスの側面も

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 かろうじてGDP(国内総生産)では世界第3位だが、すぐ後ろにはドイツやインドが迫っている。労働生産性ではG7中最下位だ。近年、経済力のランキングを落としてばかりいる日本だが、意外にも世界のトップを走り続けている経済指標がある。「経済複雑性指標(ECI)」だ。

 経済紙の記者が言う。

「もともと一国の経済力を表すものとしてはGNP(国民総生産)がありました。しかし、時代とともに実態に即さなくなった。たとえば大谷翔平選手は米メジャーで活躍していますが、その報酬は日本のGNPにカウントされてしまう。代わって2000年ごろから国内での生産活動を基準にしたGDPが使われるようになった。しかし、これも国内で1年間に生み出した価値を表したもので、経済の足腰を正しく表現しているとはいえません」

経済複雑性で日本は1位

 そこで、注目されるようになったのが、経済複雑性指標である。もともとは09年に米MITとハーバード大学の研究者が提唱したものだがシグマ・キャピタル代表の田代秀敏氏が解説する。

「たとえばバナナの生産・輸出に頼っている国は相場が急落すれば経済が苦しくなる。一方で、多岐にわたり複雑な工業製品やサービスを輸出し続けている国は強靭な経済力を持っているといえます。イノベーションの種が国内にあることから起業もしやすい。それを数値で表したものが経済複雑性指標です」

 それによると、日本は計算可能な1995年から20年までずっと1位を守り続けている。直近(20年)のランキングでは2位がスイス、以下ドイツ、韓国、シンガポールと続く。米国は12位だ。円安や低賃金が指摘される昨今にあってうれしくなる指標である。日本はやっぱり世界に冠たる経済大国なのか。

「いえ、喜んでばかりもいられません」

 とは先の田代氏。

「わが国の現状は“ガラパゴス”と呼ばれるようなモノばかりを作っては国際競争に負けています。しかも日本企業は事業を絞り込まず、多くの不採算部門を抱え込んでいるのが現状です。これは経済複雑性のマイナスの側面といえます」

 日本経済の復活はやっぱり簡単ではなさそうだ。

週刊新潮 2022年11月10日号掲載

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