「兵士は畑で取れる…」ロシア軍の人命軽視が招く“惨状” 専門家は「第二次世界大戦から全く進歩してない」

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時代遅れの塹壕

 前出の軍事ジャーナリストは「独立系メディアが報じた内容は、どれもにわかには信じがたいものばかりです」と驚愕する。

「特に印象に残ったのはスコップの描写です。充分な本数がなく、多くの兵士は素手で塹壕を掘らされたと時事通信が伝えています(註2)。ちなみに軍隊では、スコップは『円匙(えんぴ)』という呼称が一般的です(註3)。アメリカの圧倒的な物量に敗北した旧日本軍の陸軍でさえ、兵士1人につき1本の円匙が手渡されました。それがロシア軍の場合、《30人に1本》なのですから、我が目を疑いました」

 そもそも塹壕は「時代遅れの戦法」だという。戦場にドローンが出現したからだ。

「もちろん塹壕が必要な局面もあります。しかし、塹壕は上空から丸見えという致命的な欠点があります。ドローンが偵察すれば、何もかも丸見えです。おまけに塹壕に潜む兵士にとって、上空の防御は困難です。ドローンがミサイルを発射したり、爆弾を投下したりすれば、かなりの被害が出てしまうでしょう」(同・軍事ジャーナリスト)

 そのためアメリカ海兵隊などは現在、「なるべく戦場の地形を変えない」戦術を採用しているという。

「兵士が身を隠す必要があるなら、例えば茂みを活用したほうが目立ちません。敵兵や戦車といった『地上からの偵察』だけでなく、ドローンによる『上空からの偵察』に対しても発見されにくいわけです」(同・軍事ジャーナリスト)

人命軽視の“決死隊”

 裏を返せば、ロシア軍はドローンのリスクを軽視し、古い戦法である塹壕に固執しているとも言える。

「ウクライナ軍は、NATO(北大西洋条約機構)軍の支援で急速にデジタル化が進んでいます。例えば、一部の兵士はiPadのようなタブレットを持っています。ドローンにはカメラだけでなくGPSも搭載されています。もしロシア軍を発見すれば、動画や画像だけでなく、正確な位置情報もタブレットに送ってくるのです」(同・軍事ジャーナリスト)

 タブレットにはドローンからの画像情報、友軍や敵軍の位置情報など、戦場の戦術情報が示される。

「更にタブレットは、榴弾砲や高機動ロケットシステム『HIMARS』などとデジタル回線で結ばれています。ドローンから送られた位置情報を砲兵に転送すれば、ロシア軍を極めて正確に攻撃することが可能です」(同・軍事ジャーナリスト)

 ちなみにアメリカ陸軍は大ぶりなタブレット端末ではなく、スマホを利用した「ネットウォーリア」というシステムを開発し、個人装備として配備し運用を開始しているという。

 いずれにしても、衛星回線を使いタブレットを活用して戦うウクライナ兵に対し、ロシア兵は《30人に1本》の円匙しか与えられず、素手で塹壕を掘らされる──この悲惨な対比には絶句する人も少なくないはずだ。

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