長野久義“人情トレード”美談のウラに巨人の胸算用 「内海」「坂本」問題で背負わせる十字架とは?

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決め手は「西川」残留

 プロ野球巨人は11月2日に広島の長野久義外野手(37)を無償トレードで獲得したと発表した。2019年に丸佳浩外野手のFA入団に伴う人的補償として広島に移籍。ドラフト指名を2度も拒否した末に入団した巨人で、11年に首位打者に輝くなど一時代を築いた打者をプロテクトしなかったことには批判の声も出ていた。広島はこうした経緯を踏まえ「最後は巨人のユニホームがふさわしい」と古巣に打診した“人情トレード”は美談として報じられたものの、その内幕を探ると異なる側面が見えてきた。【木嶋昇/野球ジャーナリスト】

 宮崎市で秋季キャンプ初日を迎えていた巨人に衝撃が走った。長野の電撃復帰の知らせに、元同僚の坂本勇人内野手をはじめ、阿部慎之助ヘッド兼バッテリーコーチや亀井善行打撃コーチらは歓迎の声を上げた。広島担当記者が解説する。

「広島は今季途中に、長野と同じ外野手で、米球界でプレーしていた秋山(翔吾)を補強した。丸の代役で巨人から引き抜かれた長野は新天地で全盛期の姿が戻らず、移籍後は一度も規定打席に届いていなかった。来季はさらに出番が減ることが予想された上に、今季年俸は1億2000万円と高額だが、移籍の経緯を踏まえると大幅ダウンは酷。年齢的に引退もちらつく中、広島が何とか丸く収めようと、夏頃から巨人と復帰に向けた話し合いがされるようになった。(主力外野手の)西川(龍馬)が残留したことが大きく、新井(貴浩)新監督の就任で広島の体制が一新されたことも遠因になった」(広島担当記者)

 長野は広島で19年から4年間プレーし、72、95、71、58試合の出場にとどまった。巨人では来季、主に代打の切り札での起用が予想されている。さらにアダム・ウォーカー外野手の守備力の不安を考えれば、代打後に守備固めにも使える。

「(広島の)松田(元)オーナーにはオフに鍛え直して巨人をびっくりさせてやれ、などと激励を受けたが、さすがにフルシーズンを戦うことは難しい。ただ、長野ほど同僚から信望を集める選手は珍しい。広島でも1年目のキャンプ中に自費で食事会を開いてコミュニケーションを取るなど、太っ腹も有名。今の巨人で一緒に戦った選手は減っているが、すぐに精神的な支柱になると思う。原監督が言う『いろいろいいものがいいものとして出てくればいい』というのはそういうこと。長野が以前付けていた背番号7は空番のままで、復帰に何ら支障はないはず」(巨人担当記者)

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