オリックス日本一! 育成出身「宇田川優希」登場でヤクルトを圧倒した「新時代の継投術」

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新時代の「ブルペンのあり方」

 その先取りともいうべき継投が、日本シリーズでのオリックスだった。もはや、短期決戦ゆえの、スペシャル継投ではないのだ。

 しかも、特筆すべきは、オリックスはシリーズ7試合中、ベンチ入りさせたリリーバー全員が「右」だった試合が5試合。左投手を入れた2試合でも、左投手のリリーバーは使っていない。

 ヤクルトの三冠王・村上対策のワンポイント用として左投手を入れるより、1イニング・15球を150キロ超で押し切れる力の投手という観点で考えれば、右も左も関係ないという発想で考えれば、この陣容にもうなずける。

 中盤から逃げる。そのために、右左関係なしのパワーピッチャーを投入する。その新たなる“リリーバーの概念”に、ピタッとはまった一人が宇田川であり、先発からシーズン途中に救援転向を果たした山崎颯、ワゲスパックだった。

 ここに、日本シリーズ5試合・4イニングで被安打1、6奪三振、無失点の39歳・比嘉幹貴、日米通算221セーブを誇る平野に、前述の阿部もいる。

 この6人を、例えば4人ずつのローテーションで回していけば、6回から継投に入ることができる。その中の1人が2イニングを投げることで、5回からでも逃げ込める。

 日本シリーズでも、第4戦で宇田川と山崎颯が回またぎで投げると、第5戦はこの2人をベンチ入りから外し、休養に専念させた。

 日本シリーズは、チームの日本一がかかった大舞台。少々、無理をさせても投げさせるべきじゃないのか。勝ちパターンのリリーバーを、ベンチから外すのはおかしい。

 一部の評論家たちから、そういった批判が出たのも事実だ。その“根性論”は、決して間違いではない。プロの世界で、勝利への執念や強い精神力なしに、厳しいプロの世界を生き抜き、頂点を取ることなど、絶対にできない。

 しかし、時代の変化とともに、野球も着実に変わりつつあることは見逃せない。
6回から、いや、5回から逃げ切りを図るために、リリーフ陣も“ローテ”を組む。イニングや球数を考慮して、休養日も作る。

 それが、新時代の「ブルペンのあり方」になってきた。オリックスが日本シリーズで見せた「ブルペンの構成」と「継投パターン」は、間違いなく“時代の先取り”だった。

喜瀬雅則(きせ・まさのり)
1967年、神戸市生まれ。スポーツライター。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当として阪神、近鉄、オリックス、中日、ソフトバンク、アマ野球の各担当を歴任。産経夕刊連載「独立リーグの現状 その明暗を探る」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。産経新聞社退社後の2017年8月からは、業務委託契約を結ぶ西日本新聞社を中心にプロ野球界の取材を続けている。著書に「牛を飼う球団」(小学館)、「不登校からメジャーへ」(光文社新書)、「ホークス3軍はなぜ成功したのか」(光文社新書)、「稼ぐ!プロ野球」(PHPビジネス新書)、「オリックスはなぜ優勝できたのか 苦闘と変革の25年」(光文社新書)。

デイリー新潮編集部

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