少年A事件、文書廃棄に遺族の土師守さんが明かした胸中 「あきれるしかない」

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 神戸市須磨区で起きた連続児童殺傷事件から四半世紀。少年Aも不惑と呼ばれる年になったが、被害者や遺族の苦悩は今もって薄れていない。ところが10月20日、神戸家裁が少年Aの事件の記録を全て廃棄したことが明らかになった。

 社会部のデスクが言う。

「廃棄された記録は少年審判の処分決定書や、神戸地検や兵庫県警による少年Aの供述調書、精神鑑定書などです。最高裁が作成した事件記録等保存規程によると、少年事件の記録の保存は少年が26歳に達するまでと定めている。しかし、史料的価値の高い事件や、社会の耳目を集めた事件などについては家裁所長の権限で“特別保存”にするとの通達を出しています。普通に考えれば、少年Aの犯罪はこの通達に該当するはずです」

「あきれるしかない」

 神戸家裁によると廃棄したのは2008年から19年2月までの間。日時が特定できないのは、廃棄日を記した事件簿も捨ててしまっているからだ。廃棄担当の少年首席書記官も今となっては誰なのか分からない。

「廃棄のことを知ったのは1カ月ほど前のことです。新聞記者から聞かされたのですが、もはやあきれるしかありません」

 とは、事件で次男の淳君(当時11歳)を亡くした土師(はせ)守氏だ。

「そもそも、私たち淳の家族は事件の全容を知ることができませんでした。少年法という壁があったからです。そこで1998年、少年Aとその両親を相手に損害賠償の裁判を起こしました。審理の過程で資料の閲覧請求を行おうとしたのです」

「私たちの事件は閲覧の期限切れ」

 当時、少年事件の被害者が記録を閲覧・謄写するためには加害者を民事事件で訴える必要があったのだ。ところが、少年Aとその両親は責任を認め争いがなかったため、裁判は審理されることなく終了。記録を見る方途は閉じられてしまう。

「その後、少年法の改正(00年)によって一部の閲覧は可能になりましたが、処分の決定から3年以内とされていますから、すでに私たちの事件は閲覧の期限切れでした。法改正では刑事罰の対象が16歳から14歳にまで引き下げとなり、そのことも話題になりましたが、被害者が事実を知らされていないという現実は変わっていません」(同)

 裁判所の常識は社会の非常識。この現実も変わっていない。

週刊新潮 2022年11月3日号掲載

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