霊感商法じゃなくて霊視商法で解散命令が出た明覚寺とは 集めたカネは120億円以上

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 10月17日、岸田文雄首相は予算委員会で旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)に宗教法人法に規定されている「質問権」の行使による調査を実施するよう永岡桂子文科相に指示した。統一教会を調査して法令違反があれば、裁判所に解散命令を請求することができる。もっとも、これまで解散に追い込まれた宗教法人はオウム真理教と明覚寺(和歌山県)だけである。

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「質問権」は、オウム真理教による一連の事件を受けて1995年12月、宗教法人の運営面の透明化を図るために宗教法人法の改正によってできたものである。所轄の文化庁が宗教法人へ質問し、業務に関する報告を要求できる権限を設けたという。調査の結果、法令に違反して、著しく公共の福祉を害し、宗教団体の目的を著しく逸脱した行為があれば、文化庁や検察官が裁判所に解散命令を請求できる。

 1995年3月、死者14人負傷者約6300人を出した地下鉄サリン事件で、検察官と所轄官庁である東京都の鈴木俊一知事は、東京地裁にオウム真理教の解散命令の請求を行った。同年10月、1審で請求を認める決定を行ったが、オウムは即時抗告。2審は1審を支持し、即時抗告を棄却したため、オウムは信教の自由を侵害するとして最高裁に特別抗告した。1996年1月、最高裁は抗告を棄却、解散が決定した。

詐欺集団

 一方、2例目の解散となった明覚寺はどんな宗教団体だったのか。

「創設者の西川義俊は、元々製薬会社に勤務していた人物です」

 と解説するのは、宗教ジャーナリストの小川寛大氏。

「その後独立して避妊具や健康食品の訪問販売を始めますが1983年、千葉県野田市で真言密教を信奉する宗教団体をつくり、水子地蔵の販売を始めます」

 1986年、西川は真言宗醍醐派で僧籍を取得。87年、宗教法人「本覚寺」を設立して、霊視商法を始めた。92年3月、休眠状態だった高野山明覚寺を再興、これを本堂として、全国各地に系列の寺を次々に開設した。

「霊視商法の被害者の大半は、『水子の霊がとりついているから、孫が登校拒否になる』『先祖に変死の霊を感じます。このままでは子供さんが病気になりますよ』と脅された女性でした。お金を出さないと地獄に落ちますよ、と脅迫して金をせしめる。宗教団体というより、完全な詐欺集団でしたね」

 供養料は、最低で1回65万円。多くて数百万円にも及んだ。統一教会の霊感商法とよく似ている気もするが……。

「西川は、系列寺の僧侶に、霊能力の認定書を作成して配布していました。また供養料を騙し取る細かい手口を示した複数のマニュアルも用意して金集めを指導し、ノルマも課していたそうです」

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