巨人「人的補償逃れ」のワル知恵は無駄骨? “坂本問題”の影、FA戦線は苦戦予想

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「上原浩治」でも疑惑の過去

 プロ野球巨人は10月23日に梶谷隆幸外野手、高橋優貴投手、平内龍太投手ら11選手を自由契約にすると発表した。いずれも解雇ではなく、育成選手として再契約する方針という。故障からのリハビリ組中心とはいえ、前代未聞の大量“解雇”からの育成再契約との方針に「フリーエージェント(FA)での選手獲得に伴う人的補償から逃れるための悪知恵ではないか」と批判の声が上がっている。

 さる在京セ・リーグ球団幹部は、今後の巨人の出方を予想しつつ問題点を指摘する。

「日本シリーズが終われば、FA宣言選手との交渉が可能になる。巨人は恐らく人的補償が発生するA、Bランク(Aは旧所属球団で年俸3位以内、Bは年俸4~10位)のFA選手が取れる時に備えているのだろう。相手球団が人的補償で巨人の選手を要求できるのは支配下選手からで、育成選手は含まれない。支配下選手では主力などは取られないようにプロテクトし、梶谷らは故障を大義名分に一旦、育成選手に避難させておいて、いずれ支配下選手に戻すという段取りだと思う。ルール違反ではないとはいえ、この手法が常態化すれば、資金力がある球団に選手を集中させないという戦力均衡を目指した人的補償制度が形骸化してしまう」

 巨人では過去にも似たような疑惑が取り沙汰されたことがある。2018年オフ、広島から丸佳浩外野手、西武から炭谷銀仁朗捕手(現楽天)をFAで獲得したのだが、その前に上原浩治投手(引退)を自由契約にし、広島、西武両球団にプロテクト名簿を提出した直後に上原と再契約を結んだ。自由契約は手術を理由にしていたが、わずか1ヵ月余りで不可解な復帰に至った。

 さらに20年オフにはドラフト1位のルーキーだった堀田賢慎投手を、トミー・ジョン手術を理由に育成契約に切り替えた。いずれも当時、「人的補償逃れ」との見立てがあっただけに、この幹部の分析は信憑性を帯びる。

巨人の“トラウマ”

 又吉克樹投手(中日→ソフトバンク)一人しか動かなかった昨オフのFA市場に対し、今オフは阪神の西勇輝投手、西武の森友哉捕手、楽天の浅村栄斗内野手、日本ハムの近藤健介外野手ら近年になく、有力な候補選手が目白押しだ。巨人はFA選手を取らずに今季を「育成のシーズン」と位置づけていたが、原政権下では初めてクライマックスシリーズ進出を逃したことで、今オフに向けてA、B両ランクで最大2枠のFA選手を使い切るなどの大補強に方針転換するとの観測が早くから浮上している。

 そこでネックになるのが人的補償だ。球界屈指の巨大戦力を誇る巨人は過去、28人のプロテクト名簿から外さざるを得なかった有力選手を取られてきた。

「最たる例は13年オフの一岡(竜司投手)。大竹(寛投手)のFA移籍に伴い、広島に移籍した。新天地ではリリーフとしてリーグ3連覇に貢献された苦い記憶がある。18年オフは内海(哲也)、長野(久義)と生え抜きの幹部候補生を同時に抜かれ、貴重な戦力とともにチームの精神的な柱を失っている」(巨人担当記者)

 こうした球団としてのトラウマゆえ、原辰徳監督は人的補償制度の撤廃を持論としてきた。

「内海と長野の流出を踏まえ、19年オフには『なくす必要がある』と公言したが、各球団で温度差があるテーマで制度変更の機運は高まらなかった。それならと今オフはルールの抜け道を突く手を打ったと思われる」(パ・リーグ球団の編成担当)

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