サンドウィッチマンのコントを完成させた名物プロデュ―サーの述懐 番組作りは“お笑い”が一番難しい理由

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「エンタの神様」や「マジカル頭脳パワー!!」など数々の高視聴率番組をつくり上げた凄腕制作者・五味一男氏(66)が日本テレビグループを退社した。なぜ、ヒット番組を次々とつくれたのか。今後の展開はどう考えているのか(視聴率はビデオリサーチ調べ、関東地区)。

(※前編「「エンタの神様」「マジカル頭脳パワー」「SHOW by ショーバイ」…名物プロデューサーが明かすヒット番組の作り方」からつづく)

番組づくりの難易度は「お笑い」が一番高かった

 五味氏は最高世帯視聴率が22.0%に達した「エンタの神様」(2003~2010年、以降は不定期の特番)のプロデューサーと総合演出を務めている。レギュラー番組だった7年間は芸人発掘のため、毎週100~200ものネタを見た。

五味「お笑いをやっている都内のライブ会場に、20人くらいのスタッフを派遣し、ネタを撮ってきてもらった。それを見たんです。面白くないと思ったら30秒程度で次のネタに。面白かったら、その先も見た。その繰り返しでした」

「マジカル頭脳パワー!!」(1990~99年)などの人気クイズ番組をつくり上げたほか、「投稿!特ホウ王国」(1994~96年)や「速報!歌の大辞テン」(1996~2005年)などのヒット番組を企画・演出した。

 さらにアニメのショートストーリーで構成した「週刊ストーリーランド」(1999~2001年)の総監修や「マネーの虎」(2001~2002 年)の演出監修など数々の番組に携わったが、難易度はお笑い番組が一番高かったという。

五味「笑いの構造や仕組みを知るまでに1年近く時間がかかりました。完全に分かるまではスタジオに来てくれた220人の観客の方がどんなところで笑うのかなどを細かく徹底的に分析しました」

 芸人からも学んだ。

五味「ネプチューンの名倉(潤)君から聞き、印象的だったのが、『刑務所へ慰問に行くと、僕のツッコミで一斉にドッと笑いが起こる』というエピソード。普段はお笑いに接していない人たちにもツッコミはある種の記号として分かりやすいんだなと思いました。そうやって大衆に求められている笑いの最大公約数的なものを理解してゆき、一方で芸人さんをチョイスする力を身に付けていきました」

 自分の主観に頼り切らず、情報収集や分析、研究を怠らないのが五味流である。

サンドウィッチマンのコントを完成させる

 こうして五味氏は笑いをロジカルに理解した。伊逹みきお(48)と富澤たけし(48)によるコンビ「サンドウィッチマン」のコントを完成させたのも五味氏だとサンドたちは常々言っている。それは2005年のことだ。

五味「ありがたい話ですね」

 当時のサンドはコンビ結成から7年が過ぎていたが、テレビに出たことがなかった。だが、ライブでのネタを映像で見た五味氏は「磨けば輝くダイヤの原石だ」と確信。「エンタ」出演を前提にサンドと接触し、指導を始めた。

五味「当時は富澤君がツッコミ役のネタもあったんですよ。今では考えられませんが。だけど、ツッコミ役は伊達君が最善手。そんなことを2人に伝えるところから始め、やがてネタのテーマなど細かいところまでアドバイスしました」

 五味氏の指導が始まってから約3カ月が過ぎた同5月、サンドは「エンタ」でテレビ初出演を果たす。ネタは名作「ピザの宅配」。大ウケだった。放送が終わると他番組から出演依頼が相次いだ。以降、サンドの快進撃が始まり、2007年12月にはM-1グランプリで優勝する。

 飯塚悟志(49)、角田晃広(48)、豊本明長(47)による東京03の「エンタ」初出演も2005年。サンドが出演した2カ月後の同7月だった。東京03も「エンタ」出演で人気が高まった。

五味「東京03は飯塚っちがネタを考えているんですけれども、僕が『この部分はエンタ的にはこうしたほうが良いから、変えてくれないか』などと頼むこともあります。長い付き合いで、良い関係だから、受け入れてくれます」

 五味氏が東京03から信頼されている表れである。YouTuberとして大人気のオリエンタルラジオ・中田敦彦(40)も自身のYouTubeで五味氏のことを「天才プロデューサー」と評してしている。売れた芸人からの評価は絶大だ。

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