「捨てろ」「捨てない」で大げんか… 高齢者が子どもともめずに家を片づけるテクニックとは

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 久しぶりに我が子が帰ってきたと思ったら、「なに、この汚い部屋!」と怒鳴られ親子げんかに……。思い当たる節がある人も少なくないのではないか。体力が落ちた高齢者が直面する「家の片づけ」問題。70代、80代が知っておきたい片づけの哲学と方法を紹介する。【安東英子/一般社団法人「日本美しい暮らしの空間プロデュース協会」理事長】

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「これも、もう使わないから捨てないといけませんよね……」

 私が片づけのお手伝いに訪ねたあるお宅で、高齢のご婦人が寂しそうにこう漏らしました。彼女が捨てようとしていたもの、それは長らく戸棚に眠っていたバッグ――ではなく、その中にしまわれていた通帳の山でした。

 私はこうお答えしました。

「絶対に捨ててはいけません」

 昨今の「断捨離ブーム」の影響で、「片づけ=とにかく捨てること」と誤解されている方が少なくありません。

 しかし、ご婦人が保管していた通帳は、ご主人と一緒に、長年、家計をやりくりして貯金をしてきたご夫婦の歴史そのものです。その歴史の積み重ねが「今」を作ってくれた。通帳を見るだけで、苦しいけれども楽しかった若かりし日々を一瞬にして思い出すことができる。こうした思い出、つまりその方の人生が詰まっているものはしっかりと取っておくべきなのです。

ものを大事にする親世代とのギャップ

 捨てる――。それはあくまで手段であって、目的ではありません。片づけとは、決して片っ端から処分することではない。ものの数を減らしていきながら、必要なもの、使えるものをあぶり出す。これこそが片づけの最大のメリットであり、目的なのです。

 にもかかわらず、「断捨離=ばっさり捨てる」ことこそが正しいのだという認識が過度に広まっている印象を受けます。とりわけ、ものへの執着が薄い「子ども世代」にその傾向が強い。彼らと、ものを大事にする「高齢の親世代」との世代間ギャップは大きく、片づけを巡って仲たがいし、親子の縁を切るところまで発展してしまうケースはザラにあります。たかが片づけ、されど片づけ。片づけは、それぞれの人生哲学のぶつかり合いでもあるのです。

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