「慶應卒なのに手取り13万円」「2カ月のギャラが900円」 50以上のバイトを経験…芸人・ピストジャムが明かす「バイト芸人のリアル」

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2カ月分のギャラを足して900円

 慶應大学卒、吉本所属、芸歴20年――これまで一度もブレークすることなく、50以上のバイトを経験してきた“バイト芸人”・ピストジャム。そんな彼が、珍バイト遍歴やバイト芸人の生き抜き方を赤裸々につづった『こんなにバイトして芸人つづけなあかんか』(新潮社)を10月27日に上梓する。今回、彼が明かすのは、手取り13万円以下で暮らしてきたバイト芸人のリアルだ。

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 バイトする人の理由はそれぞれあると思うが、芸人がバイトをする理由は一つだけだ。本業のお笑いだけでは食べていくことができないからだ。

 僕は吉本内のタレントランクが最下層なので、舞台1回の出演料は500円だ。正確には源泉徴収で10%引かれるので450円。それが、1カ月後に口座に振り込まれる。いや、前まではそうだったのだが、いまは振り込みのシステムが変わった。

 先日、吉本から「振込額が千円に満たない場合は、翌月以降のギャラと合算して千円を超えた時点で振り込みます」というお知らせが届いていた。いわゆる少額留保というやつだ。毎月たった450円のために振り込み手数料を払い、給与明細の郵送料もかかることを考えれば、企業としてそういった判断をするのは至極当然だ。僕自身、かなり前から、自分のギャラよりもそっちの経費のほうがかかっているんじゃないかと思っていた。

 ただ、そのシステム変更のせいで、僕は3カ月に1度しかギャラが振り込まれなくなった。何カ月も仕事が月1回しかなく、2カ月分のギャラを足しても900円にしかならないので、3カ月経つまでギャラが入ってこなかった。

 この吉本芸人のギャラ500円の話は有名なので、テレビなどで聞いたことのあるかたも多いかもしれない。売れない芸人ってたいへんだなとか、本当かよ、という意見が大半だと思うが、実はこの話の一番恐ろしいポイントはこの先にある。

暇な芸人の方がお金持ちという“ねじれ”

 それは、もし僕が月に30日間ずっと毎日舞台に出続けることができたとしても、1万3500円しかもらえないということだ。月30日稼働で1万3500円しかもらえなければ、結局バイトしなければ生きていけない。

 もし本当にそんな状況で舞台に出続けたら、できるバイトがかなりかぎられてくる。深夜や早朝のバイトくらいしか無理だろう。中途半端に忙しくなった芸人ほど経済的にきついものはない。頻繁に舞台に出ている芸人はバイトができなくてお金がないのに、仕事がなくて暇な芸人のほうがバイトをたくさんしてお金を持っているというねじれの現象が起きる。実際、月に15本お笑いライブが入ったときがあったのだが、その翌月の生活は相当きつかった。ライブの日はバイトを休むことになるので、翌月のバイト代がふだんよりも5万円くらい下がったのだ。稼ぐ月でも15万円くらいしかバイトしていなかったので、それが10万円になるのだから困窮必至だ。

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