世界ランキングに入りたい「リブゴルフ」 切羽詰まったノーマンは奇策が成功し大喜びしたが

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 リブゴルフを率いるグレッグ・ノーマンが、念願の世界ランキングのポイントを「今週からもらえることになったぞ!」と大喜びしたのも束の間。一夜明けたら「やっぱり、もらえないことになっちゃった」。そんなウソのような本当の話が起きた。このこと自体が、まさに現在のゴルフ界の未曾有の混沌ぶりを如実に物語っている。【舩越園子/ゴルフジャーナリスト】

ノーマンは歓喜したが…

 サウジアラビアの政府系ファンドの支援を受け今年6月に創設された新ツアーの「リブゴルフ」は、ロンドンで初戦を開催した直後から「世界ランキングの対象ツアーとして認定してほしい」とOWGR(オフィシャル・ワールド・ゴルフ・ランキング)へ申請。しかし、以後は「検討中」とされていた。

 そして10月5日、リブゴルフは、中東や北アフリカの草の根ゴルファーたちが腕を磨くためのディベロップメンタルツアーであるMENAツアーと、戦略的提携を結んだと突如発表した。

 2011年に創設されたMENAツアーは、2016年からは世界ランキングの対象ツアーとして認定されている。そのMENAツアーと提携し、MENAツアーの一部になったことで、「リブゴルフでも世界ランキングのポイントが稼げるようになった」ことをノーマンは喜び勇んで世界へ発信したのだ。

 リブゴルフは今週10月7~9日にタイで第6戦を、来週14~16日にはサウジアラビアで第7戦を開催予定だが、ノーマンは「今週から、ついに世界ランキングのポイントがもらえる!」と歓喜の声を上げながら、腹の中では「どうだ!」と自慢したかったのではないだろうか。

MENAツアー化する手法

 ツアー規模も選手層も、リブゴルフから見ればあまりにも乏しいMENAツアーに目を付けて、急遽、提携関係を結び、それによって世界ランキングのポイントをもらうなどという奇策を思いつくとは、「ノーマンならでは」の発想である。

 リブゴルフの全試合をMENAツアーの年間スケジュールの中に組み入れ、MENAツアーに加わった新たな大会という形を取れば、それは「リブゴルフの大会」でありながら同時に「MENAツアーの大会」となる。そのことでリブゴルフに世界ランキングのポイントが付与されるという仕組みには、「なるほど」と思った。

 言い換えれば、規模的にも選手層的にもケタ違いのリブゴルフを、世界ランキングのポイント獲得のためにあえて「MENAツアー化する」ということ。提携を結んだことで、フィル・ミケルソンやダスティン・ジョンソン、キャメロン・スミスらは、みなリブゴルフの選手でありながら、同時にMENAツアーの選手にもなったことになる。

 世界の頂点に立ったビッグな選手たちが、これまで存在すらほとんど知られていなかった中東中心の下部ツアーのメンバーになるということを、一体、誰が予想していただろう。

 しかし、世界ランキングの低下が止まらないリブゴルフの選手たちは、もはやなりふりを構っていられないほど切羽詰まった状況にあり、目的達成のためなら手段は選ばないということなのだろう。

 だからリブゴルフは、MENAツアーに急接近して熱いラブコールを送った。突然のアプローチに驚いたMENAツアーは、超リッチなリブゴルフからのプロポーズにドギマギしながら頷き、あっという間に提携関係を結んだのだ。

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