岸田首相が長男を秘書官起用で“4代世襲”が決定 識者は「箔付け人事。最悪のタイミング」と分析

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タイミングの謎

「どんなエリート官僚でも、翔太郎さんと会えば平身低頭で、何でも言うことを聞くでしょう。しかし、国政の実務を仕切らせることだけはさせないはずです。それどころか、内心では馬鹿にしている可能性だってあるでしょう。岸田首相も、そんな“面従腹背”が起こる可能性は百も承知だと思います」(同・伊藤氏)

 箔を付けるために身内を首相秘書官にねじ込むケースは珍しくも何ともない。前出の中国新聞の記事でも、

《宮沢喜一内閣でおいの洋一氏(現自民党税調会長)が、福田康夫内閣で長男の達夫氏(現自民党筆頭副幹事長)が、それぞれ政務担当を務めた例がある》

と指摘している通りだ。

 伊藤氏は「私にとって理解不能なのは、なぜこのタイミングで起用を発表したのかという点です」と言う。

 岸田政権は支持率の低下に苦しんでいる。10月3日に招集された臨時国会では、安倍元首相の国葬や、統一教会と自民党の癒着に関し、野党側から厳しい質問が飛ぶのは間違いない。

 なぜ逆風が吹き荒れている時期に、長男の起用を発表したのか──?

「翔太郎さんの秘書官就任を1~2カ月遅らせても、何の問題もないでしょう。それでも岸田さんは起用に踏み切った。合理的な説明が成り立つとすれば、岸田さんは最近、打つ手、打つ手が失敗ばかりで周囲を信じられなくなり、精神的に追い詰められていた。そこで“精神安定剤”として、可愛い長男を手元に置いた──これくらいではないでしょうか」(同・伊藤氏)

「なりたい総理」

 伊藤氏によると、歴代首相は「なったら総理」と「なりたい総理」の2種類に分類できるという。

「『なったら総理』は日々『総理になったら、こんな政策を実行する』と考えている政治家です。代表的な人物は中曽根康弘さん(1918~2019)でしょう。中曽根さんは初当選を果たした日から『自分が総理になったら、こんな政策を実行してみせる』と考え、大学ノートにメモを取り続けました」

 安倍元首相も「なったら総理」の1人に挙げられるという。

「毀誉褒貶の激しい政治家だったとはいえ、安倍さんなりに明確なビジョンを持っていたことは間違いありません。『総理になったら、こんな日本にする』というイメージを持っていましたし、その実現に奔走しました」(同・伊藤氏)

 一方、「なりたい総理」の代表例は菅直人氏(75)だという。こちらは「総理になりたい」だけで終わってしまった政治家だ。

「菅さんは『いかにして権力を奪取するか』を、毎日のように考えているように見えました。自分が総理になることもイメージしていたでしょう。しかし、実際に総理の座に就くと、やりたいことは何もなかった。目標と手段の混同というか、一種の“燃え尽き症候群”の傾向は、岸田さんにも見出せると思います」(同・伊藤氏)

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