アントニオ猪木さんが告白していた、難病「心アミロイドーシス」との闘い

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 10月1日に亡くなったアントニオ猪木さん(享年79)の死因は、「心アミロイドーシス」を原因とする心不全だった。猪木さんがこの指定難病を発病したのは2019年の秋のこと。その翌年、「週刊新潮」の取材で、病気について告白していた。喜寿を迎えての病との戦いは、いかなるものだったのか。当時のインタビューを改めて掲載する。(週刊新潮2020年7月23日号掲載)

 昨年、少し耳が聞こえなくなって病院にかかったんです。そのときにいろいろな検査をしてもらい、心アミロイドーシスという難病に罹っていることが判明しました。それが昨年の秋ごろです。なんでも、心臓にアミロイドという悪い“膜”ができているらしい。そのため心臓の機能が落ち、全身に充分な血液を送ることが難しくなるそうです。

 この数年、息が苦しいと感じても、単に老化が原因だと思っていました。アミロイドという変な病巣が関係しているなんて意識もなかったな。いまはそのための薬を飲んでいるけど、これがまたべらぼうに高い。薬代のためにまだまだ働かなくちゃいけないよ。

〈 “燃える闘魂”アントニオ猪木は1960年、力道山にスカウトされ日本プロレス入り。デビューから60年が経つ。“いつ何時、誰の挑戦でも受ける”を信条にスポットライトを浴び続けてきた。しかし、「元気ですか!」と叫ぶ、あの力強さとは裏腹の難病告白。今年2月に77歳となり、「喜寿を祝う会」では元気に闘魂ビンタを喰らわせていたが、それも病いを押してのことか……。もっとも、紡がれる言葉はよどみない。淡々と、難病との闘いを語りはじめた。〉

 思い起こせば、十何年か前、リングに駆け上がったときに“あれ? こんなに息切れするかな”と感じたのが最初でした。5、6年前からは階段の上り下りで息切れするようになった。それで何かあったわけではないんです。難病が分かってから振り返ると、私はだいぶ前から足が冷えやすくてね。いわゆる冷え性です。それと2年前に腰の神経の手術をして、車椅子生活だったときはむくみが酷かった。これらもアミロイドが原因だったんじゃないかな。

 いまは、歩くのもちょっと苦しい。昨年妻を亡くして一人暮らしなので、倒れたりすると大変。だから体がキツいときは無理せず休むようにしています。コロナもあるし、施設に行ってリハビリする時間も取れない。外出を極力控え、自分なりに自宅の廊下などを歩いています。これまで心臓のトレーニングはしてきたんですが、アミロイドは別物。とにかく無理をしないというのが現在の基本です。

〈ここで一旦、猪木氏が直面することになった大きな試練に触れておきたい。「日本アミロイドーシス学会」幹事で丸子中央病院内科医・信州大学特任准教授の小山潤氏が解説する。

「肝臓で作られる、トランスサイレチンというたんぱく質の変性、沈着に起因します。このたんぱく質がさまざまな組織や臓器に沈着してアミロイドと呼ばれる物質ができ、臓器障害を引き起こすのです。アミロイドが心臓の心筋細胞間質に溜まった状態が心アミロイドーシス。アミロイドが心筋を圧迫して心臓のポンプ機能が異常をきたし、血液が送れなくなって心不全になるわけです」

 息切れやむくみといった症状が出て、重い場合は夜間に呼吸困難になることも。発症から10年ほどで命を落とすケースも少なくないという。〉

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