藤浪晋太郎「MLB挑戦」、イップス再発懸念に「もう1年は阪神で」の声 残留のキーマンは「新監督」

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「金本監督の責任は大きい」

 プロ野球阪神の藤浪晋太郎投手(28)が9月27日、今オフにもポスティングシステムによるMLB挑戦の希望を表明した。プロ1年目から3年連続で2桁勝利を挙げた後、制球難で長いスランプに陥った。今年は8月上旬の1軍昇格後は先発として好投を続け、制球に改善の兆しは見えるものの、渡米は「時期尚早」との声が上がる。藤浪のMLB挑戦は今がベストなのか、実現した場合の成否とともに探った。【津浦集/スポーツライター】

 藤浪は大阪桐蔭高校を甲子園大会の春夏連覇に導いた後、2013年にドラフト1位で阪神に入団した。150キロを優に超える剛速球を武器に、ルーキーイヤーから開幕ローテーション入り。細かな制球はなくてもナチュラルにシュートする直球は特に、右打者には脅威だった。いきなり10勝を挙げると、2年目以降も11勝、14勝と順調にエースに成長しつつあった。

 しかし16年、金本知憲監督の就任と同時に、快進撃が止まる。同年7月、制球が定まらずに崩れるというパターンを繰り返していた藤浪に、金本監督は明らかに限界だったにもかかわらず、161球の懲罰完投を強いた。

「これがスランプを長くした元凶。1軍で実績十分だった投手に強制的に多くの球数を投げさせ、さらし者にしたような采配はいただけなかった。“イップス”のような藤浪の制球難は金本監督の責任に依るところが大きいと、6年以上経ってもそう思う」(NPB元監督)

 シュート回転が武器だった直球は制御できず、すっぽ抜けて右打者を襲うようになった。時に乱闘を招くことも。「広島の大瀬良(大地投手)にまで死球を与え、大瀬良に逆に気遣われることもあった。それほど深刻だった。(中日で通算219勝の)山本昌に臨時指導を受けても、復活が遠かった。藤浪はこのまま終わるのではないかと、多くの人が思った」(阪神担当記者)

 リリーフに配置転換されても活路を見いだせなかった。16年に最高1億7000万円だった年俸は漸減し、今季は4900万円まで落ち込んだ。

「ポテンシャルの高さは誰もが認めていた。けがをしているわけでもない。(来季監督になる)岡田さんは評論家時代に、藤浪を再生できたコーチは年俸1億円でも2億円でも与えるべきとしていた」(同)

「ショートアーム」で復活の兆候

 だが今年8月上旬、1軍に昇格すると、見違えるように制球を改善し、先発として好投を続けた。元NPB球団監督はその変貌ぶりに驚く。

「特にテークバックが安定した。キャンプのブルペンで捕手の後ろから見た時は、右手のトップの位置が頭の後ろに行ったり、前に行ったりと全く定まっていなかった。これではストライクが入るわけがないと思った。それが右耳の横に高確率でぴたっと収まるようになった。トップの位置までの持っていき方も、ダルビッシュ(有=パドレス)や大谷翔平(エンゼルス)が導入した、メジャーで流行の『ショートアーム』に近い。内野手のようなコンパクトな動きで、これなら以前のようには乱れない」

 制球さえ定まれば160キロ超の速球、150キロに迫ろうかという高速スプリットはMLBでも十分に通用する。身長は197センチで、193センチの大谷を上回る。長身はMLBでもアドバンテージになるはずで、高い角度からの投球は強打者にも脅威となりそうだ。

「MLBの野球にアジャストすれば、6人の先発投手枠に入る可能性はある。狙って三振を奪え、救援経験もあるから先発でなくてもニーズはある。日本にいたままでは制球難が定着した負のイメージも拭えない。MLBはよりレベルが高いが、逆にショック療法的に潜在能力が顕在化する期待もある。30歳になると、MLBでは途端に契約が難しくなるから早ければ早いほどいい」(MLBのベテラン代理人)

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